東京の鉄道小ネタ集〜続き〜

東京の鉄道にはまだネタがあります。2か月も塩漬けにしていたのですが、ほかに書くことがないので「暇ネタ」として出すことにします。

京王線準特急

全国どこを探しても特定の路線だけにしかない種別というのは色々ありますが(阪和線の「B快速*1」、阪神本線の「区間特急」、近鉄大阪線の「区間快速急行」、神鉄三田線の「特快速」など)、京王線にもあります。

準特急」という種別があり、府中を境に東側が特急で、西側が急行という種別であります。もともとは新宿〜高尾山口間の急行・通勤快速を速達化するために設定されましたが、現在では休日に限り八王子行も設定されています。

準特急の位置づけはどうなのかというと、「特急と急行の間」。特急と急行の間に設定される種別は圧倒的に「快速急行*2」が多く、実際に西武・東武小田急名鉄近鉄・南海・京阪・阪急・阪神西鉄で設定されています。「準特急」なる種別があるのは京王線だけ。ただ、その昔は小田急近鉄でも設定されていたそうな。

京王線には「快速」があり(他社の“準急”に相当する)、「快速急行」にしてしまうと快速と間違えられるという危険性はあります。

LEDなので見づらいのですが、これが京王線の「快速」。

池袋駅の謎・その1

池袋駅に乗り入れる路線は、山手線・埼京線湘南新宿ライン東武東上線西武池袋線丸ノ内線有楽町線副都心線の8本であります。そのうち、東武東上線和光市から、西武池袋線は練馬から西武有楽町線経由で有楽町線副都心線に乗り入れています。これによって不思議な現象が起きているのです。

同じ会社の電車が地上と地下それぞれの池袋駅に顔を出す」という現象であります。実際、有楽町線副都心線直通対応車両の東武9000系西武6000系は地下鉄に乗り入れず地上の池袋駅に顔を出す運用があり、このようなことになります。

関西では、近鉄3200系・3220系が近鉄京都駅と地下鉄京都駅の両方に顔を出すというまったく同じことがあります。

池袋駅の謎・その2

池袋のビックカメラのCMソングに、このような一節があります。

「不思議な不思議な池袋 東が西武で 西 東武

この歌詞から読み取れることは、JR池袋駅を中心として、東側に西武池袋駅西武百貨店*3・パルコ・サンシャインシティなど西武グループ関連の施設が、西側に東武池袋駅東武百貨店*4といった東武グループ関連の施設があるということです。

もっとも意図してこうなったわけではなく、西武池袋線を運営していたのは「武蔵野鉄道」という会社であり社名に「西」という文字は入っていません。西武鉄道という会社自体は戦前から存在していましたが、現在の西武新宿線に当たる路線しか運営していませんでした。また、東武東上線は「東上鉄道」であり、1920年東武鉄道と合併し、武蔵野鉄道も1945年に旧西武鉄道と合併し現在に至ります。ということで、偶然こうなったにすぎないということです。

社名ではなく駅名ですが、関西では近鉄奈良線でも似たようなケースがあります。「花園駅生駒駅は大和西大寺駅より西にある」というネタです。これも単なる偶然。

中央線の元祖「特別快速」

中央線・常磐線湘南新宿ラインには「特別快速」という「快速」の一つ上の種別があります。略して「特快」。その中でも中央線のは全国で初めて設定された元祖「特別快速」であります。

1969年に運行を開始し、当時は昼間のみの運行でした。さらに言えば1988年12月改正まで国分寺は通過でした。それまでは現在の「中央特快」に当たる系統しかなかったため、これが単に「特別快速」と呼ばれていました。このダイヤ改正青梅線に直通する特別快速が登場しましたが、これは「青梅特快」として区別されています。ちなみに、国分寺に停車し始めた当初は「中央特快」は停車して「青梅特快」は通過でしたが、これは当時のダイヤでは新宿駅の発車時刻が特急に近く、国分寺に止めると特急の通過待ちをしないといけなくなるため、やむなく国分寺は通過としたものでした。

その前に、1986年11月改正(国鉄最後のダイヤ改正)で「通勤快速」が設定されましたが、現在の通勤快速とは異なり新宿までは快速と同じ停車駅で新宿〜三鷹間は中野のみ停車、三鷹以西は各駅停車でした。結局、この通勤快速はわずか2年で中央特快に置き換えられ、これとはまた別の通勤快速(中央特快の停車駅に荻窪・吉祥寺を加えたもの)が新たに設定されました。

その後1993年4月改正で「青梅特快」も国分寺に停車、さらには朝の東京行きのみ「通勤特快」(高尾から先は八王子・立川・国分寺・新宿に停車、後は快速と同じ停車駅)も設定されました。ただ、朝の超過密ダイヤの時間帯に運行するため、停車駅が少ないのにもかかわらずかつての阪神本線の「区間特急」と同じく昼間の特快より遅いということになってしまっています。

特別快速は英語で言うと「Special Rapid」で、関西の新快速と同じです。実際には「中央特快」が「Chuo Special Rapid」、「青梅特快」が「Ome Special Rapid」、「通勤特快」が「Commuter Special Rapid」であります。

ちなみに、東京で言う「特別快速」が関西の「新快速」と同等なのですが(関西の新快速も運行開始までは「特別快速」と仮称されており、市販の時刻表にも書かれていた)、名古屋では両方存在します。

列車番号の付け方

JR東日本東京近郊区間電車特定区間国電区間)では独特の列車番号の付け方が採用されています。これは、運行本数が多いためにほかの路線と同じ付け方では効率が悪くなるためです。

まず最初の2ケタで始発駅の発車時刻を表します。12時台に発車する電車は「12」をつけます。深夜0時台に発車する電車は「24」ですが、1時台だと「1」になります。
国電区間外・他社線から直通してくる電車の場合は路線によって数字の付け方が異なります。

後の2ケタは運行番号。運行番号というのは、人間でいうところの「勤務シフト」。何時にどこの車庫を出て、終点に着いたら次はどの電車になるか、それとも入庫するのか…というのが細かく決められています。ちなみに、東京近郊区間であっても「下りは奇数・上りは偶数」という原則があるため、運行番号は必ず奇数になっており、上りは1を引いて番号が付けられます。東京から放射状に延びる路線で、都心をまたいで運行しない路線では通常通り上りが偶数、下りが奇数になります。

なお、湘南新宿ラインは複数の路線をまたいで運行する故に上り下りの関係が分かりづらいため、下1桁は方向にかかわらず必ず「0」にしたうえで方向はアルファベットで区別することになっています。また湘南新宿ラインのみ列車番号のつけ方が異なり、1000番台は宇都宮線横須賀線(全区間各駅停車*5)、2000番台は高崎線東海道線(大宮〜大船間快速)、3000番台は高崎線東海道線(特別快速)、4000番台は宇都宮線横須賀線宇都宮線内快速)であります。さらに、百の位・十の位は発車時刻ごとに北行きは60から、南行きは10から順に振られています。

湘南新宿ライン以外の路線で、都心をまたいで直通する(東京駅などで上下が入れ替わる)路線の場合は以下の通り。

山手線は大崎で番号が変わるようになっています。そのため、1周する*6たびに番号が100増えていきます。その関係で、大崎以外の駅を始発駅とする電車は大崎から先で同じ番号にならないよう、大崎から先の番号からあらかじめ100引かれています。

最後のアルファベットは以下のように決められています。

数字だけ 鶴見線青梅線五日市線の同一時間発の1本目の列車
A 京浜東北線(浦和・下十条から出庫)
京葉線(快速)
東西線直通(東西線内快速)
B 京浜東北線(浦和・下十条・蒲田以外から出庫)
中央・総武緩行線E231系
鶴見線青梅線五日市線の同一時間発の2本目の列車
C 京浜東北線(蒲田から出庫)
中央・総武緩行線209系500番台
E 武蔵野線
八高線
湘南新宿ライン北行
F 総武線快速
埼京線川越線(快速)
南武線(川崎〜立川)
相模線
G 山手線
H 中央線快速・青梅線五日市線(分割併合あり)
常磐線快速(E231系
川越線区間運転する列車
横須賀線の付属編成による区間運転の列車
南武支線
K 千代田線直通(JR東日本持ち)
埼京線川越線(各駅停車)
横浜線
S 千代田線直通(東京メトロ持ち)
横須賀線
埼京線川越線(通勤快速)
T 中央線快速・青梅線(分割併合なし)
Y 京葉線(各駅停車)
東西線直通(東西線内各駅停車)
湘南新宿ライン南行

これは「1343T」電車。東京駅を13時台に出た「43T」運用の電車であります。

「956G」電車。大崎駅を9時台に出た「57G」運用の電車であります。ちなみに、これを見ればわかるように山手線は内回りが上り*7となっています。

ちなみに、JR西日本ではアルファベットこそ違うものを使うようになっていますが、特殊な付番方法は採用されていません。

数字だけ 大阪環状線桜島線(ほかの路線に直通しない)
大和路快速大阪環状線内)
B JR京都線JR神戸線JR宝塚線各駅停車(休日ダイヤ)
学研都市線JR神戸線乗り入れ電車(休日ダイヤ)
C JR京都線JR神戸線JR宝塚線各駅停車(平日ダイヤ)
学研都市線JR神戸線乗り入れ電車(平日ダイヤ)
E 大阪環状線桜島線直通
H 阪和線関空快速は除く)
K 琵琶湖線JR京都線JR神戸線(京都〜西明石間快速 休日ダイヤ)
大和路線(T・Yに該当するものは除く)
S 桜井線(奈良〜桜井間の区間列車)
桜井線・和歌山線(奈良〜桜井〜高田〜王寺)
おおさか東線
学研都市線(線内折り返し)
T 琵琶湖線JR京都線JR神戸線(高槻〜西明石間快速)
桜井線(奈良〜高田)
桜井線・和歌山線直通
大和路線から和歌山線・桜井線に直通する電車
Y 大和路線区間快速大阪環状線直通)

「モハ」と「デハ」

私鉄でも、車両形式にカタカナをつける会社があります。Tc車とT車はそれぞれ「クハ」「サハ」しかないのですが、M車とMc車は会社によって違いがあります。

東武・西武・相鉄・京成*8は「モハ」なのですが、東急・京急小田急・京王(かつての「大東急」)は「デハ」を使っています。「デ」は「電動車」の「デ」で、関西でも神戸電鉄が「デ」だけで、叡山電車が「デオ」「デナ」として使っています。

私鉄では運転席のあるなしにかかわらず電動車はすべて「モ」「モハ」「デハ」とするのが圧倒的な多数派ですが、西武ではM車とMc車は厳然と区別されており、私鉄では珍しく「クモハ」が使われています。最近でも30000系の2両編成に「クモハ32100」が登場しました。

ちなみに、関西ではカタカナをつけるのは少数派で、近鉄・南海・神鉄叡電京福ぐらいであります。

関東でカタカナをつける会社では「ハ」をセットにしてつけるのですが、南海でも「ハ」をセットにしてつけています。近鉄神鉄はカタカナ1文字だけ。叡電では「デ」のあとに長さに応じて「オ」「ナ」をつけています。京福は「モボ」ですが、「ボ」はボギー車を表す記号。ただ、京福にはボギー車しかいません。

  Mc M Tc T
東武 モハ モハ クハ サハ
西武 クモハ モハ クハ サハ
京王 デハ デハ クハ サハ
京急 デハ デハ *9 サハ
東急 デハ デハ クハ サハ
小田急 デハ デハ クハ サハ
相鉄 モハ モハ クハ サハ
名鉄
近鉄
南海 モハ モハ クハ サハ
山陽*10 クモハ モハ クハ サハ
神鉄
西鉄

ここに出ていない会社(東京メトロ・阪急・阪神・京阪・京成)はカタカナを一切付けません。

ちなみに、南海50000系にある「スーパーシート」車も記号は「クロ」「モロ」ではなく「クハ」「モハ」となっています。小田急20000形も同じく「サロハ」ではなく「サハ」。

西武新宿駅が離れている理由

新宿駅には、山手線・埼京線・中央線・湘南新宿ライン京王線小田急線・丸ノ内線・都営新宿線大江戸線が乗り入れています。

ただ、実はもう1本、西武新宿線があるのですが、駅の場所が違います。

JR新宿駅は新宿3丁目、京王線・都営新宿線小田急線・丸ノ内線新宿駅は西新宿1丁目、大江戸線新宿駅は「新宿」と名乗っておきながら渋谷区代々木2丁目*11にあります。住所こそ異なりますが、おおむね一か所にまとまっています。

ところが、西武新宿駅だけはどこにあるのかというと、日本最大の歓楽街として知られる“眠らない街歌舞伎町にあるのです。

これは、もともと西武新宿線の東京側のターミナルが高田馬場だった*12名残ですが、戦後になって新宿乗り入れ構想が持ち上がり、現在の西武新宿駅まで路線を延長し、最終的にはJR新宿駅東口にある「ルミネエスト新宿」の2階に乗り入れるところまで計画は進んでいました。

ただ、乗り入れを予定していたルミネエスト新宿には6両編成までしか入らないという欠陥があったため、ここまで乗り入れるメリットがなく、乗り入れを断念し現在の西武新宿駅の位置に落ち着いています。

*1:現在でこそ阪和線にしか存在しないが、1996年までは東京メトロ東西線の快速のうち、東陽町まで各駅停車、東陽町より先は浦安と西船橋のみ停車する快速を「B快速」といっていた。現在はこの「B快速」が単に「快速」と呼ばれ、浦安〜西船橋間ノンストップで残りは各駅停車の「C快速」が「通勤快速」になった。ちなみに、1996年まで存在した「A快速」は東陽町西船橋間ノンストップだった

*2:ただし、東武東上線には特急がないため「快速急行」が最上位、阪神本線では実質的に特急と同格またはそれ以上、かつての東武日光線では急行より下だった

*3:西武池袋駅西武百貨店の1階

*4:東武池袋駅東武百貨店の1階

*5:ただし、浦和駅はホームがないため通過

*6:山手線は一度運用に入ると同じ方向にひたすら回り続ける。大阪環状線のように途中で内回りから外回りに変わるなんてことはない

*7:大阪環状線大阪駅での東海道本線の向きに合わせて、外回りが上り

*8:近年の新車にはカタカナをつけず、阪急などと同じく数字だけ

*9:京急にTc車は存在しない

*10:カタカナこそつけられているが、使うのは図面と許認可申請書類のみ

*11:JR東日本の本社も最寄り駅は新宿駅だが、所在地は渋谷区代々木2丁目。Suicaの裏面に書いてある

*12:そのため、西武新宿線の0キロポストは西武新宿ではなく高田馬場にある