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和田岬線存廃問題

鉄道

 JR西日本が、神戸市兵庫区和田岬線を廃止する方向で検討を始めることが分かった。神戸市営地下鉄海岸線の開通などで利用客が約3割減った上、「地域を分断している」として地元から廃止を求める声が上がっていた。JR西と神戸市は2011年度、地元団体を交えた協議の場を設け、廃止を前提に地域の活性化策を検討する。(足立聡、木村信行)

 和田岬線はJR兵庫駅から分岐する支線の通称で、長さ2・7キロ。終点の和田岬駅は1890(明治23)年に貨物駅として開業し、1911(同44)年に旅客駅となった。

 和田岬駅の2009年度の乗降客数は1日約1万人。平日は朝夕のラッシュ時に計17往復を運行し、三菱重工業三菱電機などで働く通勤客が主に利用している。だが、01年開通の地下鉄海岸線に乗客の一部が流出し、三菱の従業員の減少で乗客は約3割減っている。

 一方、神戸市は09年度に「兵庫運河活性化協議会」を設立し、地元住民らと議論。第5次神戸市基本計画(11〜25年度)で臨海部を重点活性化エリアと位置づけ、兵庫運河を生かしたまちづくりを進めている。

 同協議会では、運河を巡る船の運航や歩行者が回遊できるルートの整備を検討したが、その際に「和田岬線が地域を分断している」と指摘が出ていた。これを受け市は今月4日、矢田立郎市長名で同線の廃止を求める要望書をJR西に出した。

 和田岬線と競合する地下鉄海岸線の利用者数は、1日4万人(09年度)と当初予測の13万人を大幅に下回っている。市が廃止を求める背景には、約830億円の累積赤字を抱える海岸線の利用促進を図る狙いもあるとみられる。JR西は「まちづくりに協力する観点から存廃を検討する」と、廃止の方向で協議する。

(「神戸新聞」2011年2月15日)

以前、読売新聞にも同じような記事が出ていましたが、今度は神戸新聞に詳しく出ています。

2001年にも、海岸線が開通するのにあたって存廃問題が出たのですが、この時は電化して残すことになり、一度は立ち消えました。かつては沿線の企業(主に三菱重工三菱電機)が通勤利用を認めなかったのですが、数年前に海岸線経由で通勤するのが解禁され、本数も多く使い勝手がよい海岸線に利用客が流出する事態が起こってしまいました。ただ乗客が減ったとはいえ、通勤時間帯しか運行していないので、「乗客が少ないから廃止」という話は聞きません。

実際、兵庫駅まで快速利用で和田岬線経由よりも、神戸駅まで新快速利用で海岸線経由のほうが早いこともあります。西明石・明石からならば朝の上り快速は明石〜兵庫間ノンストップなので和田岬線経由のほうが早いのですが、加古川・姫路からの場合は快速は西明石まで各駅停車なので、新快速で神戸駅まで行きそこで海岸線に乗り換えた方が早く着きます。

また、和田岬駅の近くに神戸ウイングスタジアムがあることから、観客輸送などに使えるはずなのですが、その役目は海岸線が担っており、2002年FIFAワールドカップの観客輸送には和田岬線は使用されず、応援国ごとに分離して御崎公園駅と兵庫駅から歩いて行くようにされていたどころか、和田岬線は定期便まで運休していました。

ただ、廃止したらしたでまた新たな問題が噴出してきます。沿線に川崎重工があり、和田岬線は沿線の企業の通勤者のみならず、日本全国に向けて新造車を出荷するために重要な路線でもあります。過去に何度か廃止問題が出てきたとき、この車両輸送があったために廃止を免れた、というのもあります。

結局のところ、神戸市のエゴイズムが丸出しなのです。表向きには「地域活性化のため、JR西日本に協力を要請する」というのですが、本当は「JR西日本のせいで海岸線が赤字になった」と言いがかりを付けて廃止させるつもりでいます。沿線の企業が海岸線経由での通勤を解禁したのも、神戸市から何らかの圧力があったのでしょう。通勤客、つまり固定客をがっちりつかめば赤字解消の一助となります。

さて、これと同じような構図、どこかで見たことがありませんか? 伊丹空港関西国際空港の関係と同じ。「関空の利用客を増やすために伊丹空港を廃止せよ」という知事がいるのです。