東海道・山陽新幹線の小ネタ集

運賃はどうやって計算する?

新幹線の営業キロは、並行する在来線(例:東海道新幹線に対する東海道本線)の駅が併設されている場合はその営業キロをそのまま使いますが、新幹線単独駅の場合や別の路線としか接続していない場合はそれに相当する駅を選んでその駅と同一とみなして設定します。

ただし、新横浜と新神戸はそれぞれ「横浜市内」「神戸市内」と指定されているため、200kmを超える乗車券の場合は、新横浜まで乗る場合は横浜駅まで、新神戸まで乗る場合は神戸駅までの運賃を払うことになります。

横浜市内(中心駅:横浜駅
神戸市内(中心駅:神戸駅

また、山陽新幹線の場合は新岩国〜徳山が経路特定区間に指定されており、岩徳線*2経由のルートで運賃計算を行います。

新神戸駅での乗り継ぎ

新神戸駅は新幹線の単独駅ですが、「神戸市内」扱いになっており、上記の区間の駅で降りることもできます。ただ、在来線に乗り継ぐ場合は新神戸でいったん改札を出て、最寄りの在来線駅まで移動しないと乗り継ぎはできません。

本来、「神戸市内」着の切符で神戸市内の駅で途中下車はできないのですが、新神戸で降りて三ノ宮・元町・神戸・新長田から再入場して在来線に乗る場合に限り途中下車することができます。有人改札だった時代は「三ノ宮まで行って在来線に乗る」と言うと菱形のスタンプを押して出してくれましたが、現在は自動改札機が導入され、黄色い自動改札機に通してから在来線に乗り換えることになっています。

逆に、神戸市内発の切符で新神戸から新幹線に乗る場合も同様で、上記の4駅で途中下車して新神戸まで行くということもできます。ただし、自動改札を通れない場合もあります。

いずれにせよ、新神戸〜三ノ宮・元町・神戸・新長田の地下鉄・バス・タクシー代は別途必要になります。

なお、新大阪〜西明石にはこれとはまた別に「選択乗車」の特例があります。

N700系が速い理由

700系時代と比べると、「のぞみ」の東京〜新大阪の所要時間は5分早くなりました。それは2つの要因があります。

加速度を上げる

新幹線車両の加速度は、ギヤ比を高速よりに振ってあるためどうしても遅くなります。700系では2.0km/h/s、300系では1.6km/h/s、0系では1.2km/h/sでした。

ところが、N700系では在来線の通勤電車並みの2.6km/h/sまで引き上げられ、270km/hまで3分で到達します。よって、その分所要時間も短縮されます。考え方としては、阪神電車の「ジェットカー」みたいなものです。

車体傾斜制御

N700系の肝ともいえる「車体傾斜制御」。東海道新幹線には、255km/h制限がかかるカーブがたくさんありますが、ここを270km/hで回ると外側にきつい横Gがかかります。そこで、車体を内側に1度傾けることで減速せずに回ることができます。

どんなものかというと、エアサスの空気圧を調整するだけのシンプルなものですが、これで内側に車体を1度傾けるだけでかなり違ってきます。実のところ、このシステムはキハ261系名鉄2000系小田急50000形でも採用されています。

副産物として、余計な加減速をしなくなった分消費電力も削減されました。

なお、山陽新幹線にはそこまできついカーブはないのでカーブで傾斜こそさせないものの、車体を水平に保つ制御を行います。東海道新幹線に営業運転で出入りしない7000・8000番台は車体傾斜装置が省略されています。

特定特急券

新幹線での特定特急券は以下の2つがあります。

  1. 隣接する駅同士の自由席特急券
  2. 「のぞみ」自由席特急券

1は、自由席特急券の料金は通常期の指定席特急券から510円引いた金額ですが、隣接する駅同士の場合は高くなりすぎるため840〜950円に抑えてあります。開業した時点での隣接駅を基準とするため、後から駅が追加されても2つ先の駅(広島〜三原、東京〜新横浜など)まで特定特急券で行くことができます。

2は、「のぞみ」は元来特急料金を「ひかり」「こだま」の指定席よりも割高に設定しており、2003年10月改正で自由席を設定する際でも、上記のルールにのっとって設定した場合は自由席料金も「ひかり」「こだま」より高くしないといけないのですが、自由席は「ひかり」「こだま」と料金をそろえたため、「特定特急券」として設定されました。

余談ですが、通常は乗車券と特急券は別の切符として出されますが、乗車券と特急券の区間が同じ場合はまとまって出てくることがあります(いわゆる「一葉券」。新幹線に限らず、在来線や私鉄の特急でも見られる)。

阪急に線路を貸した

新大阪〜京都で阪急京都線と並走する区間があります。阪急京都線では上牧〜大山崎がこれにあたりますが、実は阪急の線路として使われていたことがあります。

もともと、この区間では阪急は地上を走っていたのですが、淀川沿いで地盤が悪く、平行して新幹線を建設することになった際、工事で阪急の線路が地盤沈下してしまう恐れがあり、阪急も高架化することになりました。そのほか、新幹線の高架で視界が悪くなり安全確認が困難になるため高架化したという説もあります(この件に関しては、近江鉄道にも類例があるが後述する)。

その際、新幹線の線路を先に完成させ、それを阪急の仮線として直流1500Vを流して(当時、阪急京都線にATSはなかった)一時的に使用し、その間に阪急の高架線を作り、阪急の高架線が完成したら元に戻すというステップで工事が進められ、1963年の年末に完成しました。ちなみに、この期間中に河原町乗り入れを果たしています。

新幹線・阪急ともに1435mmゲージだからできた芸当といえます。

近江鉄道に補償金

近江鉄道本線には、新幹線と接続する米原駅付近のほか、高宮〜五箇荘で新幹線と並行する区間があります。建設に当たって、「伊吹山鈴鹿山脈の眺望が失われる」などといって近江鉄道国鉄に補償金を支払うように求めていた、などと言われていますが、実際は阪急の高架化と同じ理由で、新幹線の高架で視界が悪くなり安全確認が困難になるため、踏切の改良費用などを国鉄が負担することで話がまとまり、実際に当時の金額で1億円が支払われています。

このあたりの顛末は、「東海道新幹線工事誌」に書いてあります。

車内チャイム

開業当初は、在来線の特急電車と同じく「鉄道唱歌」でした。ただ、新幹線のイメージに合わないという意見があったため、黛敏郎作曲のチャイムに差し替えられましたが、今度は半音が多くて暗いと評判が悪かったため、1972年から4打点チャイムに変更されています。

この当時は1種類しかありませんでしたが、1987年からは始発駅を発車後と終着駅に到着前に別のメロディのチャイムを流すようになり、これまでの4打点チャイムは途中駅到着前のみ流されるようになりました。のちに「のぞみ」が運行を開始した際には別のチャイムが流れるようになったため、なし崩し的に「ひかり」「こだま」用のチャイムとなりました。かつての「のぞみ」始発・終着駅用メロディは東京駅の東海道新幹線ホームで、「ひかり」「こだま」の始発・終着駅用メロディは品川駅の15番線で発車メロディとして使用されています。

これで2003年まで続きましたが、JR東海ではダイヤ大改正と品川駅開業を機に「AMBITIOUS JAPAN!」キャンペーンを実施し、同名の曲がそのキャンペーンソングとして採用されました。700系は両先頭車の帯をぶった切って「AMBITIOUS JAPAN!」のステッカーを貼り付け、300系でもドアの横にステッカーを張っていました。

そして、それだけではとどまらず、車内チャイムまで「AMBITIOUS JAPAN!」に変えました。今回は種別による区別はせず、JR東海が所有する全車両で流すようにしています。当初、このキャンペーンは2003年いっぱいで終わるつもりだったのが、翌年に開業40周年を迎え、愛知万博も控えていたことからさらに延長され、最終的には2005年9月まで続きました。

なお、JR西日本では同時期に展開していた「DISCOVER WEST」キャンペーンの曲「いい日旅立ち・西へ」を使用しており、こちらも種別に関係なくJR西日本が所有する全車両で流れています。

また、最近はJR東海からJR西日本に700系が移籍したのですが、移籍する際にチャイムも変えています。

名古屋飛ばし

今でこそ名古屋駅には新幹線の全列車が停車しますが、1992年3月改正で「のぞみ」が運行を開始する際、朝一番の下り列車「のぞみ301号」に限り、名古屋と京都を通過していました。

もともと、「のぞみ」は東京〜新大阪を2時間半で運行することを売り物としており、東京・新横浜を朝6時に出発したビジネスマンが大阪のオフィスに9時までに到着できるようにする必要がありました。

ただ、当時は夜間に保線工事をやった後、まだ地盤が固まっていないため朝の数本は減速運転をする必要がありましたが、減速運転をしつつ名古屋・京都にも停車すると2時間半で運行できなくなってしまい、また名古屋駅の通過予定時刻は7時40分ごろで、早過ぎてかえって不便なことから、苦肉の策として名古屋・京都を通過することになりました。

このような理由があり、やむなく名古屋駅を通過することになったのですが、これを読売新聞・中日新聞がスクープしたことで表面化してしまい、JR東海が前もって根回しをしなかったこともあり、名古屋の政財界からの反発はすさまじいものがありました。しかし、のちに「朝の下り1本だけ」ということで落ち着き、1992年3月14日の運行開始を迎えましたが、名古屋駅を「のぞみ301号」が通過するのを全国に流していました。なお、名古屋駅と京都駅は列車が全速力で通過できる構造ではないため、ATCで70km/hに抑えて通過していました。

最初の1年間は朝と夜の2往復だけで、区間も東京〜新大阪だけでした。1993年3月改正で昼間にも毎時1本運行され、博多まで乗り入れを果たしましたが、まだ「のぞみ301号」は残っており、それに続行する形で「のぞみ1号」(新横浜通過、名古屋・京都に停車)を運行して便宜を図ることになりました。

1997年に、作業をしながら地盤を固めることができる新しい保線機械(マルチプルタイタンパー)が開発され、早朝の速度制限がなくなり、新横浜・名古屋・京都に停車しつつ東京〜新大阪を2時間半で走ることが可能になったため、「のぞみ301号」は「のぞみ1号」に統合されて廃止され、それ以降名古屋と京都を通過する便は設定されていません。

ちなみに、京都駅も通過することになっていましたがなぜか大問題にはなりませんでした。これは、計画段階でそもそも京都駅を通らない*3ことと比べれば大した問題ではないのと、朝早すぎて観光に向かないためでした。

なお、「サンライズ瀬戸・出雲」も名古屋駅を通過しますが、夜遅過ぎて利用できる時間帯ではないので仕方ありません。

電源周波数

日本では、電源周波数は富士川を境に東側が50Hz、西側が60Hzと分かれています。新幹線は高速走行のために大量の電力を消費するため、高電圧で送電できる交流電化が選択されました。

ところが、山陽・九州・東北・上越新幹線はその心配はないのですが、東海道新幹線は富士川を渡るため、どちらの周波数を採用するか問題になりましたが、当時は50Hz・60Hz両対応の機器がなかったため、将来山陽新幹線を開通させることを念頭に置いて、距離の長いほうに合わせて60Hzに統一することになりました。ただ、電力会社からは50Hzで送電されているため、線路沿いで60Hzに変える必要があります。

そこで、浜松町・綱島・西相模・沼津変電所に周波数変換設備を設けて走行用の電力は60Hzに統一してあります。新富士〜東京の各駅に送る電力は50Hzのままです。

その後、50Hz・60Hz両対応の機器が開発されたため、北陸新幹線長野新幹線)では軽井沢を境に周波数が変わりますが、E2系はどちらも対応しており直通しています。

ちなみに、N700系には普通車の窓側と端っこの全席、グリーン車は全席に100Vのコンセントがついていますが、60Hzになっています。もっとも、サービス用の電源はインバータを介して供給されるので関係ないのですが。

16両1323席の原則

JR東海は編成の長さと座席のレイアウトにこだわっており、300系からN700系まで、20年にわたって「16両編成・定員1323人」*4という原則を貫いています。

これは、もし急きょ車種が変更になっても、指定席の変更などの手間を省きビジネスマンなどの大量需要にこたえるための措置で、500系は例外中の例外で、開発段階でもJR東海から極力座席のレイアウトを合わせるように圧力をかけられていましたが、それでも500系の代わりに300系や700系を入れると20人*5は指定券に書いてある席がないということになってしまいます。

その後、N700系が開発され、JR西日本の「山陽新幹線で300km/h走行ができるようにする」という要望が通ったために500系を置き換えることになり、2010年2月いっぱいで東海道新幹線から撤退し、JR東海の悲願だった「16両1323席の車両に統一」が果たされました。

例外として、鳥飼基地への出入りは認められています。実際は、700系には喫煙室がないため、所定ではN700系で運行する便が急きょ700系での運行に変わった場合、700系になっても「全席禁煙」で指定券を出すため、タバコを吸えません。*6

FMラジオを持って乗ろう

新幹線のグリーン車にはシートラジオがあり、センターアームレストにある操作パネルにイヤホンを繋ぐと車内限定のラジオが聴けます。1〜4chがオリジナル番組で(C・Z編成とB・N編成で番組は異なる)、5chはNHKラジオ第一放送です。ちなみに、ここで使うイヤホンは航空機とは異なり基本的に家から持ってきて使うのですが、記念品として?車内販売で売っています。

ただ、このサービスはグリーン車だけかというと実はそうではありません。FMラジオを持っていれば普通車でも聴けます。周波数を合わせるとグリーン車で流れているのと同じ番組が聴けます。

周波数はこちらに書いてあります。

http://n700portal.jr-central.co.jp/music/index.html(C・Z編成)

http://n700portal.jr-central.co.jp/music/west.html(B・N編成)

*1:在来線と接続するが、東海道本線ではなく横浜線

*2:もともと、岩徳線山陽本線の短絡線として建設されており、岩国~徳山が全通した時点で山陽本線の一部とされ、旧線(柳井経由)は「柳井線」として分離された。ただし、複線化にあたってトンネルをもう1本掘らないといけないため、柳井線経由で複線化され、柳井線が山陽本線に戻された。ただし、山陽新幹線のルート自体は岩徳線に近い

*3:京滋バイパス経由、もしくは鳥羽街道駅周辺を経由するなど複数考えられていた

*4:内訳:普通車1123人・グリーン車200人

*5:5号車5人・13号車5人・15号車10人

*6:所定で700系を使用する場合は10・15・16号車が喫煙車となる。もっとも、最近は700系E編成や683系4000番台といった喫煙室すらない全面禁煙の車両もある。かつて、485系時代の「しらさぎ」で喫煙車しか空いておらずひどい目にあったことがある