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最先端のディーゼル車

自動車

皆さんは、ディーゼル車にどのようなイメージをお持ちでしょうか。多くの方が「遅くてストレスがたまる」「排気ガスが汚い」というネガティブなイメージばかり持っていたと思います。そのため、かつてはサニーからセドグロまでどの乗用車にもディーゼル車が設定されていましたが*1、あまり売れず、年々厳しくなる排ガス規制に適合させて売り続けるとコスト面で見合わないため2000年代初頭にはほとんど姿を消しました。

ただ、ガソリン車と比べて燃料費が安く*2、低速でも大きなトルクを発生するという特性を買われ、商用車には広く使われています。一時期はミニバンやSUVに多く搭載され、よく売れていた時期がありました。

ただ、最近はディーゼルのほうが熱効率が良く、常用回転数でのトルクが大きく乗りやすいというメリットが注目され、また排ガス浄化装置も進歩してきたため、ディーゼル乗用車が見直されています。そのため、120系プラド以来消えていたディーゼル乗用車を、日産が2008年に復活させました。その車はT31 X-TRAILで、2010年の排ガス規制を一足先にクリアしました。

前置きが長くなりましたが、今日は日産に呼び出しを食らってまた行くことになり、整備の待ち時間を利用して最先端のディーゼル乗用車、「X-TRAIL」20GTに乗って最先端技術を体感することにしました。

ディーゼル車だとすぐわかるのは、運転席に座ってメーターを見たときです。ガソリン車のタコメーターは8000rpmまで(レッドゾーンは6500rpmから)ありますが、ディーゼル車の場合は6000rpmまでしかなく、レッドゾーンは4500rpmからです。

いくら低速域のトルクに富むとはいえ、道が混んでいてあまり踏み込めない状況下では本来の走りを体感できません。そこで、裏道に回って踏み込みやすい環境で走ることになりました。踏み込むと…CKV36並みの高加速。それもそのはず、最高出力は2500ccのガソリンエンジン並みで、最高トルクは3500ccのガソリンエンジン並み。

さらに、変速機はマニュアルモードつきの6速AT(CVTではない理由については後述)なので、途中でマニュアル車感覚の運転を楽しませてもらいました。止まっている状態でシフトレバーを右に倒すと、1速に入った状態になります。加速していくうちに、シフトレバーを「+」に入れて1段ずつ上げていきます。パドルシフトはないため、変速する場合はいちいちハンドルから手を離して行う必要があります。なお、これはあくまでマニュアル車の雰囲気を楽しむためのものです。

この車は4WD車ですが、スイッチ*3を「2WD」にしたままだったため、ずっとFFで走っていました。

スペック

車両のスペック
車両型式 LDA-DNT31
駆動方式 4WDオールモード4×4-i)
スリーサイズ(mm) 4635(L)×1790(W)×1700(H)
空車重量 1660kg
定員 5人
トランスミッション マニュアルモード付き6速AT
エンジンのスペック
エンジン型式 M9R
気筒数 直列4気筒
バルブ数・機構 DOHC 16バルブ
燃料供給方式 コモンレール直噴
過給機 インタークーラー付きターボチャージャー
排気量 1995cc
最大出力 127kW(173PS)@3750rpm
最大トルク 360N・m(36.7kgf・m)@2000rpm

変速機

同じX-TRAILでも、ガソリン車はCVT(2000ccはマニュアルモードなし、2500ccはマニュアルモードあり)ですが、ディーゼル車は従来のオートマチックです。ただし、6速マニュアルモード付きです。

これは、M9Rの最大トルクが367N・mと大きく、これだけの大トルクに耐えられるCVTがないためです。動力伝達をプーリーとベルトの摩擦力だけに頼っているという構造上、あまり大きなトルクは伝達できません。今でこそ、エルグランドの3500cc車にもCVTを採用できるほど許容トルクは上がっていますが、それでもまだ足りないため、従来のATを搭載するに至ったようです。同じような理由で、他社のディーゼル乗用車も従来のATが搭載されています。*4

余談ですが、マニュアルモードにして運転して、減速して停止すると、何速に入れていても1段ずつ戻っていきます。

  • 2000ccガソリン:CVT(マニュアルモードなし)※以前は6速MTもあった
  • 2500ccガソリン:6速マニュアルモード付きCVT
  • ディーゼル:6速MTもしくはマニュアルモード付き6速AT

登場当初は、ディーゼル車は6速MTしかありませんでした。理由は、ATでは日本の排ガス規制に適合できなかったためで、その問題を解決するのに時間がかかりました。この2年の遅れの間に、AT車でも排ガス規制に適合できるめどが付き、満を持して登場しました。欧州向けには一足先にディーゼルAT車が投入されていましたが、排ガス規制の関係で出力を抑えていました。

ディーゼルエンジンターボチャージャー

昨今のディーゼル車は、サイズを問わず過給しています。それどころか、船舶や鉄道車両でもディーゼルエンジンには過給機がほぼ必ず付いています。これは、ディーゼルエンジンターボチャージャーは相性が良いためです。

ディーゼルエンジンとターボの相性が良い理由として、ディーゼルエンジンは空気だけを吸いこんで圧縮し、高温・高圧の空気の中に燃料を噴射して自然発火させて燃焼させるという構造で、ガソリンエンジンでありがちな異常燃焼*5とは無縁なことが挙げられます。また、ガソリンエンジンとは異なりスロットルバルブが不要*6で、低回転でも排気ガスが多く、ターボを効かせやすいのです。

コモンレール式燃料噴射装置

近年のディーゼルエンジンで使用されている燃料噴射装置で、頑丈な金属製のパイプ(これをコモンレールという)に燃料をためて加圧し、そこから分岐してシリンダーごとに配置した噴射装置で燃料を噴射するというものです。かつてはシリンダーごとにポンプが1個ずつあり、そのポンプで燃料を加圧し、カムで噴射装置を駆動し噴射するものが主流でした。

現在の噴射装置は、カムで駆動するのではなく、電磁石や圧電素子を使用し、電子制御ができるようになったほか素早く駆動できるようになりました。この原理を生かして、一発で全部噴射するのではなく何段階かに分けて噴射し、燃焼室内の急激な温度と圧力の上昇を防いで燃費を改善し、NOx(窒素酸化物)やPM(微粒子)を減らすという工夫が行われています。

ちなみに、圧電素子を用いた噴射装置はより身近な所で使われています。何かというとエプソンインクジェットプリンターで、圧電素子でインクを噴射しています。

エンジンの型式

X-TRAILディーゼルエンジンは「M9R」ですが、どう見ても日産式のエンジン型式表記ではありません。なぜかというと、ルノーのエンジンを流用しているためです。つまり、このエンジンはフランス製です。

ちなみに、OEMなどで国内の他社製のエンジンを使用する場合は供給元のエンジン型式をそのまま使用します。なぜかというと、自社で型式を設定した場合は改めて国交省で審査を受ける必要があり、その分コストが余計にかかるためです。

  • 3G83(三菱からのOEM供給による軽自動車)
  • 3B20(DAYZ)
  • K6A・R6A(スズキからのOEM供給による軽自動車)
  • 4P10(NT450アトラス:三菱ふそうキャンターのOEM)
  • LF-VD・LF-VDS・LF-VE・PE-VPS(2代目ラフェスタ

逆に、日産のエンジンをルノーで使う場合、日産での型式をそのまま使う場合と、ルノーで改めて型式を割り当てる場合があります。

ちなみに、日産のエンジン型式は以下のように定められています。

MR 20 D E
1 シリーズ 2 排気量 3 バルブ機構 4 燃料供給 5 過給機

1:エンジンのシリーズを、アルファベット1〜2文字で表します。最近のエンジンは「○R」ですが、V型エンジンには「V」、ディーゼルエンジンには「D」が使われる傾向があります。

2:排気量は100㏄単位です。ただし、1000cc未満の場合は0が頭につきます。「CGA3DE」「MRA8DE」のような例外もあります。

3:SOHCもしくはOHVの場合は何も付きません。DOHC(ツインカム)の場合は「D」、NEO VVLもしくはVVEL(可変バルブリフト)の場合は「V」が付きます。

4:何も付かない、もしくは「S」の場合はシングルキャブ(ディーゼル車は機械式噴射ポンプ)、「T」はツインキャブ、「E」は電子制御インジェクターディーゼル車は電子制御噴射ポンプ)、「D」は直噴です。

5:自然吸気の場合は何も付きません。「T」はシングルターボ、「TT」はツインターボ、「R」はスーパーチャージャー、「RT」はスーパーチャージャーターボチャージャーの併用です。「Ti」はディーゼル車でインタークーラー付きターボを表します。

*1:イメージがわかないかもしれないが、スカイラインにもディーゼル車があった

*2:日本では軽油の方が安いが、ディーゼル車の普及率が高い欧州では軽油の方が高い国もある

*3:X-TRAIL4WDは電子制御

*4:CX-5・アテンザパジェロはガソリン車でも従来のATを搭載しているが、デリカD:5はガソリン車がCVTなのに対してディーゼル車は6速ATを搭載している

*5:ガソリンエンジンの場合、過給圧や圧縮比を上げると異常燃焼を起こしやすくなるため、むやみに圧縮比や過給圧を上げられない。一方で、ディーゼルエンジンの場合はガソリンエンジンで言うノッキングを起こさせるという構造上異常燃焼はさほど問題にならないため、過給圧や圧縮比をガソリンエンジンより高くできるが、実際はエンジンの強度との兼ね合いで制限がある

*6:ガソリンエンジンは空燃比の管理がシビアで、燃料の噴射量だけではなく空気の量を調節する必要がある。一方で、ディーゼルエンジンは燃料の量だけで出力を調整する