近鉄電車の小ネタ集 from 塩浜

秋は「鉄道の日」が近いということもあり、各地の鉄道会社でイベントが多数行われています。

今年は、久々に近鉄電車で伊勢に行ってきたということもあり、「きんてつ鉄道まつり」に参加してきました。本来は五位堂・高安(大阪地区)の方が近いのですが、他の用事が入っていたため、2日とも予定が空いていた塩浜(名古屋地区)まで足をのばしました。

近鉄の車両メンテナンス体制

近鉄では、大がかりな検査は「検修車庫」で行います。「検修車庫」は他の鉄道会社でいう「工場」とほぼ同様のものであり、かつては近鉄でも「工場」と言っていました。これとはまた別に「高安検修センター」というのもありますが、こちらは車両の納入整備やリニューアル工事・廃車解体を行う場所です。

簡単な整備は「検車区」の「車庫」で行います。車両の所属はそれぞれの検車区となっています。近鉄で「検車区」というのは、複数の「車庫」を束ねる組織です。

なお、1982年まで存在した近鉄の4工場とは、大阪線の電車を担当していた高安工場(一部機能が高安検修センターとして残存)、奈良線京都線の電車を担当していた玉川工場(若江岩田駅の近く。現・ニトリモール東大阪)、名古屋地区の電車を担当していた塩浜工場(塩浜検修車庫として現存)、南大阪線の電車を担当していた古市工場(古市車庫の隣)でした。高安・玉川・古市の3工場は五位堂検修車庫に統合されましたが、五位堂では近鉄の全車両を扱えるほどのキャパがないことや、名古屋地区の車両には抑速ブレーキがなく*1青山峠を越えられないものが多かったため、塩浜工場のみ残されました。

塩浜では養老鉄道伊賀鉄道四日市あすなろう鉄道の車両も検査をしていますが、近鉄名古屋線標準軌で、養老鉄道伊賀鉄道は1067mm、四日市あすなろう鉄道は762mm(特殊狭軌)のため、そのまま塩浜まで行くことはできません。どのようにして検査しているのかというと、養老鉄道の電車は東方操車場(桑名~播磨)で標準軌の台車に履き替えて電動貨車で塩浜へ連れて行きますが、伊賀鉄道四日市あすなろう鉄道の電車は主要部品をトラックで塩浜まで運び、車体はそれぞれの所属先で検査を受けます。なお、南大阪線の電車も同様に橿原神宮前標準軌の台車に履き替え、電動貨車で五位堂へ連れて行かれます。

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この電動貨車の真ん中に、本来の台車を載せ、標準軌の仮台車をはいた車体の前後に貨車を連結して五位堂または塩浜まで送迎します。

2種類のマスコン

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今の電車はレバーを前後に動かすタイプのマスコン、しかも無接点タイプのものが主流ですが、昔の電車はこのようなタイプのマスコンで、床下についているものを小型化したようなカム軸をレバーで回してノッチを切り替えていました。

これは、実際に奈良線の電車に付いていた日立のマスコンで、上の3つの接点が前進・後進の切り替え、下の6つの接点がノッチの切り替えです。上の3つの接点は前進・後進の切り替えレバーと連動しており、一番上の接点は「前」「後」のどちらかにすると必ずONになり、下2つの接点で前後を区別します。ハンドルのロックも兼ねており、「断」にするとハンドルが回らなくなります。

このタイプのマスコンの場合、右に回して加速するのですが、近鉄の場合は急こう配を抱える路線が多いことから、「断」から左に回す*2と抑速ブレーキがかかるようになっています。この抑速ブレーキの操作方法が、奈良線大阪線で異なります。

奈良線の場合は、抑速側が「進め」と「保ち」になっており、「進め」に入れると1段進みます。1段進めた状態で「保ち」にして制御器の状態をキープしておきます。低い段に入れ直す場合は、いったんOFFにして「進め」と「保ち」を何度も入れ直して目的の段まで持っていきます。

大阪線の場合は、抑速側も加速側と同じ1~5段になっており、ハンドルを入れたい段に合わせるとその段まで自動的に移行します。低い段に入れ直す場合でも、入れたい段にハンドルを合わせるだけでOKです。

なお、特急は奈良線式の「進め」「保ち」になっています*3。また、奈良線でもシリーズ21大阪線式になっているようです。

電車の仕組みが分かる模型

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近鉄の有志が作った、2800系のカットモデルです。パンタグラフ、乗降扉、ベル、各種灯火類・照明、側面の種別表示器を実際に操作できるようになっており、見学者への説明や、研修に使えるようです。

車掌スイッチは乗降扉の開閉に使うもので、上から押し込むと開き、下から押し上げると閉まります。なお、近鉄ではJRなど他社とは異なり、スイッチが上下逆になっています。しかも、阪神電車は一般的な「下のボタンを押して開ける、上のボタンを押して閉める」タイプのため、近鉄阪神ともに車掌は両方の操作法を覚えないといけません。
近年の電車はリレー式の車掌スイッチが付いており、開閉ボタンは単なる押しボタンですが、ここで実演されていたのは昔ながらの直接自動ドアの回路を操作するタイプで、押すのに力がいります。また、何度も操作すると電極がすり減るため、定期的なメンテナンスが欠かせません。また、当然ながら操作する際には鍵を差し込んで回し、ロックを解除しなければなりません。
ドアを閉めると、本来はメーターパネルについている「戸閉」ランプが付きます。かつてのJRではこのランプが付けば出発できましたが、近鉄など私鉄では車掌が発車に支障がないことを確認し、ベルやブザーを鳴らして運転士に知らせて初めて出発できます。

そのベルも付いています。前後の乗務員室間で合図を出すためのベルは、100円ショップでも手に入るような卓上ベルと同じ音がします。なお、近鉄のベルは「チーン」ですが、阪神電車などは自転車のベルと同じ音がします。もうひとつ、インターホンのベルもあり、こちらは火災報知機のような音がします。

上についている大きな箱は、テールライト・種別標識灯・車内照明のスイッチです。ヘッドライトのスイッチはまた別につまみがあります。
「種別灯(準)」と「種別灯(急)」は、それぞれ下にある白色灯のスイッチで、(準)は電車の正面に向かって左側、(急)は右側です。近鉄での点灯パターンは以下の通りです。

種別灯(準) 種別灯(急) 種別
消灯 消灯 普通
点灯 消灯 準急・区間準急
消灯 点灯 急行・区間急行
点灯 点灯 快速急行・特急・鮮魚列車・回送・試運転

「標識灯(赤)」は、色が示す通りテールライトのスイッチで、ONにすると両方とも点灯します。なお、近鉄では車庫内で車両の入れ替えを行う際、その標識として種別標識灯とテールライトを全部点灯させるようになっています。スイッチが「尾灯」になっていないのはそのためです。
この3つのスイッチは、上に押しこむとON、下に引くとOFFになります。

「電灯制御」は車内照明のスイッチで、押して手を離すと戻ってきます。「入」を押すと点灯し、「切」を押すと消灯します。同じ形なので間違えないよう、「切」のスイッチを青くして区別しています。

ドアの右上にある4つのランプは、1970年代の近鉄電車でおなじみだった行燈式の種別表示器です。当時の電車は方向幕は正面だけで、側面は行燈で種別だけ表示していました。普通・準急・急行・区間快速の4種別に対応していましたが、1980年代から側面にも方向幕が整備され、行燈を付けていた車両も側面に方向幕を装備するようになったため、現在では見られません。もっとも、このタイプの種別表示器は枠が4つしかなく、奈良線では6種類(普通・区間準急・準急・急行・快速急行近鉄)・快速急行阪神))必要になるため、今では使い物になりません。鋼製の電車は種別表示器の跡が埋め込まれ、塗装されているのでどこにあったかわかりませんが、3000系はステンレスの板でふさいだだけだったため、種別表示器の跡が残っていました。

「パンタ」と書かれた箱は、パンタグラフの昇降スイッチです。「上」を押すと上がり、「下」を押すと折り畳まれます。「上」にだけカバーがされているのは、電気機器の整備作業中にうっかりパンタグラフを上げて通電させることによる感電事故を防ぐためです。

方向幕

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基本的に、近鉄の通勤電車の方向幕はどこでも同じタイプで、路線によって中身が異なるぐらいです。ただし、設定方法が独特で、「シリーズ21」以前の通勤電車では種別と行き先が一体化しているのにもかかわらず、種別と行き先の設定スイッチが別になっています。通常、種別と行き先が一体化している場合は、組み合わせごとに番号が振られていますが、近鉄の方向幕は種別には番号が振られておらず(普通・準急・急行・区間快速快速急行・回送・貸切・試運転から選択)、行き先にのみ番号が振られています。「この車両○○まで」が付いたものにも番号が振られています。
ただし、存在しない組み合わせに設定すると設定器の「故障」ランプがついて幕が動きません。シリーズ21は種別と行き先の表示が完全に独立しているため、幕では表示できなかった組み合わせが出せてしまいます。

2004年までは、近鉄旧国名(大和・河内・伊勢・伊賀・志摩)が付いた駅は一部を除き旧国名を省略して表示していました。例えば、伊勢中川は単に「中川」と表示していました。ただし例外もあり、そのうちの一つがここで出てきている「伊賀神戸」です。兵庫県の「神戸」と間違えやすいからでしょう。また、伊勢若松に至っては「伊勢」が大きいものと小さいものが混在していますが、単に「若松」とだけ書いたものは存在しません。また、新種別などの追加を伴わない限り、一斉に交換せず傷んだものだけ検査のついでに交換しているため、編成中で混在していることもあります。伊勢中川行きの電車で、1両だけ「伊勢中川」であとは「中川」だった、ということもありました。

展示されていたものは、2004年に旧国名付きの表記に改められてから2009年に上本町駅が「大阪上本町」に改称される以前のもので、まだ「区間準急」はなく、上本町行きは単に「上本町」とだけ表示していました。

神戸三宮行きの方向幕は、近鉄の流儀にならうと「神戸」は小さく書かなければならないのですが、伊賀神戸河内長野と同じように全部同じ大きさで書かれています。

近鉄の方向幕の書き方

なぜ旧国名も含めた正式な表記にしたのかというと、スマホなどを用いて路線検索を行う際、省略した駅名をそのまま打ち込んで全然違う駅名が出てきてしまう*4などといったことが多発したためです。近鉄の窓口で切符を買う際には問題はないのですが、それ以外では混乱することが多かったため、正式な表記にしたようです。

5200系

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近鉄大阪線名古屋線・伊勢志摩エリアでは長距離の急行が運行されており*5、そのための車両として2610系などといったクロスシート・トイレ付の電車が投入されていました。ただ、座席が狭いと不評だったことや、トイレ付のロングシート車が長距離急行に投入されたこともあり、「もっと質の高い車両を投入してほしい」という声が上がっていました。そこで投入されたのが5200系です。

大阪線などの長距離急行に使う車両の伝統を守り、トイレ付のクロスシート車となっていますが、2610系とは異なり3ドアで、座席は転換クロスシート*6が装備されています。どこかで見たような電車だと思った方は鋭い。実は、JR西日本221系を開発する際、近畿車輛からこの5200系のコンセプトがほぼそのまま持ち込まれたと言われています。

先に登場した3200系・6400系は車体がアルミ合金ですが、5200系は側面に大型の連続窓、運転席に曲面ガラスを採用しており、開口部が大きいため、強度確保の目的で車体は鋼製に戻されています。また、ドアの位置は両端は4ドア車にそろえられており、中央に1か所ドアが配されています。3200系以降の車両なので、窓の並びは前後対称になっています。*7

顔は8810系以降の通勤電車に近いものですが、正面の窓周りが1段ふくらんでおり、その部分が近鉄マルーンに塗られています。種別標識灯とテールランプは、21000系以降の特急と同じくLEDのものを使って共用しています。

上質な車内設備は好評を博しましたが、3ドアということで4ドアを標準とする近鉄の通勤電車の中では浮いた存在になってしまい、大阪側ではラッシュ時の混雑がひどすぎて使いづらいため、大部分が名古屋線に配置されています。名古屋線では名古屋方に2両編成を連結し*8、6両編成で急行として使うことが多いようです。近鉄で3ドアの電車は5200系以外存在しないため*9、3ドア車と4ドア車が混在してしまいます。名古屋地区では一般列車の乗車位置表示がないため*10、5200系が見えると並び直し、ということもあるようです。

上記のとおり、扱いづらい車両だったことから13編成で製造を終了し、後継車種として、クロスシート車の居住性とロングシート車の輸送力を併せ持つ4ドア車の5800系「L/Cカー」にバトンタッチしました。大阪線以上にラッシュ時の混雑がひどい奈良線でも、昼間や休日にはクロスシート車が望まれていたことから、5800系・5820系が投入されています。

メインは大阪線名古屋線の長距離急行ですが、団体列車としての使用も考慮されており、京都や天理に顔を出したこともあるほか、今年はついに難波までやってきました。団体列車として使用することを念頭に置いて、座席番号が振られています。大阪・名古屋方*11が1番で、山側がAです。2013年3月のダイヤ変更までは、これまた特急と同じく現在の1Aに相当する席が1番で、窓側が奇数、通路側が偶数でした。かつては225系などにあるような補助席があり、補助席にも番号が振られていましたが*12、更新工事を受けた際に撤去されました。撤去した跡には、5820系のものを大きくしたような仕切りが付いています。

これまで5000番台は狭軌の車両に割り当てられていましたが、5200系からは標準軌路線の長距離急行用クロスシート車の番号になりました。近鉄では、千の位の数字でだいたいどんな車両かわかります。

(3桁) 独立支線用
1・2 大阪線名古屋線
3 烏丸線直通用
4 (縁起が悪いので欠番)
5 標準軌路線の急行用クロスシート
6 南大阪線
7 けいはんな線
8・9 奈良線京都線

かつては5・6は狭軌の車両に割り当てられていたため、名古屋線でも6000番台の車両*13が走っていたことがありました。また、近年では奈良線大阪線で車両の共通化が可能な限り進められたこともあり、1000番台の車両が奈良線に新造投入されたり、本来は奈良線向けの車両であった8810系や9000系大阪線名古屋線に転属したりしています。

なお、千の位のルールは一部が特急用車両にも適用されているようで、南大阪線の特急用車両は千の位が必ず「6」になっているほか、かつての京都線橿原線向け小型特急車*14は18000系・18200系・18400系でした。

特殊狭軌

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日本では、線路の幅は4種類あります。

1435mm 新幹線
関西の私鉄・地下鉄
京浜急行電鉄
1372mm 京王線
都営新宿線
東京都電
東急世田谷線
函館市電
1067mm JR在来線
関東の私鉄の大部分
南海電車
近鉄南大阪線
神戸電鉄
762mm 三岐鉄道北勢線
四日市あすなろう鉄道

日本の鉄道路線の大部分は、1067mmもしくは1435mmで敷設されており、近鉄だと奈良線大阪線などといった主要幹線は1435mm、南大阪線吉野線国鉄との貨物列車の直通(吉野杉を運んでいた)を行っていたため1067mmで敷設されています。

しかし、これよりさらに狭い幅で敷設されたものもありました。この場合、線路の幅は762mmであることが多く、これらの路線を近鉄では「特殊狭軌線」と言っていました。一般には「軽便鉄道」などと言われています。

今では、営業路線としては三重県内の3路線と黒部峡谷鉄道だけになってしまいましたが、昔は国鉄でも特殊狭軌線が多数存在しました。ただ、国鉄線として敷設する場合は最初から1067mmで敷設すると定められており、ほとんどが私鉄を買収して国有化した路線で、1950年には全て1067mmに改軌されてなくなりました。

三重県内の762mm幅のまま残っている私鉄も、もともとは地場系で、戦時統合で三重交通近鉄系のバス会社として現存)に合併させられ、鉄道部門を「三重電気鉄道」に分社化し、近鉄に合併されたという経緯をたどっています。現在では3路線だけですが、過去には5路線ありました。

このほか、三重交通鉄道路線としては神都線・志摩線がありましたが、この2路線は1067mmであり、神都線は1961年に全廃、志摩線は大阪・名古屋から特急を直通させるため1970年に標準軌化されました。

かつて、湯の山線も762mm幅だった時代は、内部線・八王子線と合わせて「三重線」と呼ばれており直通運転も行っていましたが、1964年に標準軌化して名古屋から直通列車(かつては大阪からの特急もあった)を走らせるようになりました。三重電気鉄道が近鉄に合併されたのは1965年であり、近鉄に受け継がれた時点では、北勢線・内部線・八王子線が762mmで残されていました。そのため、2015年3月まで、近鉄には3種類のゲージ(1435mm・1067mm・762mm)があったということになります。2種類であれば近鉄以外でもよく見かけますが*15、3種類ともなると近鉄が唯一でした。

名駅のそばには、3種類のゲージ(1435mm:近鉄名古屋線、1067mm:JR東海関西本線、762mm:三岐鉄道北勢線)の線路を一気に横断できる踏切があります。

762mmという特殊な規格のため、近鉄の他の路線などで普及しているカルダンドライブが導入できず*16、大手16社の中で唯一吊り掛け式の電車が残っています。
また、線路が狭いのに合わせて車体も小さくなっています。車体幅はランクルや日産サファリなどといった大型SUVよりちょっと広い程度で、座席は路線バスのような1人掛けのものが付いています。内部線・八王子線の260系は経営移管後に大規模なリニューアルが行われ(一部は新造して置き換え)、冷房が付くなど、ほとんど放置状態だった近鉄時代に比べて快適性が大幅に向上しました。なお、クーラーは車体(屋根)補強の手間を省くことや、重心が高くならないようにするため、かつてJR九州で見られた床置きタイプのものが設置されています。

2013系「つどい」

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2013年の伊勢神宮式年遷宮にあたって、近鉄では大プロジェクトが動き出しました。古くからお伊勢参りの足として近鉄線がよく利用されており、1953年以来式年遷宮の時期が近付くと、毎回のように伊勢方面への輸送力増強プロジェクトが動き出すほどです。また、東海道新幹線の開通後は、名阪特急が中心だった特急の営業戦略を、首都圏から名古屋経由、西日本各地から京都経由*17で伊勢への観光需要に応えるという方針にシフトさせた歴史もあります。

2013年の伊勢神宮式年遷宮に伴うプロジェクトは、ひとつは50000系「しまかぜ」の投入、もうひとつは23000系「伊勢志摩ライナー」のリニューアル工事で、このほかに伊勢市駅宇治山田駅のリニューアルも実施されたほか、式年遷宮を直前に控えた2013年3月のダイヤ変更では、鶴橋・津~宇治山田がノンストップだった甲特急も伊勢市駅に停車するようになりました。

しかし、これだけにはとどまりませんでした。お伊勢参りに来た乗客を、今度はもっと南へ、志摩地区へ誘致するため、伊勢市~賢島で「しまかぜ」とは別の観光列車を走らせようというプロジェクトも動いていました。

50000系は新造しましたが、伊勢市~賢島の観光列車は2000系を改造して投入することになり、2013年の式年遷宮にちなんで「2013」が入っている編成が選ばれました。もう一つ理由があり、この編成は2000系で唯一トイレが付いているためです。伊勢市方からク2107-モ2013-モ2014という編成になっています。見ての通り、モ2013は中間車です。

なお、2000系はどのような車両なのかというと、1978年に名古屋線の旧性能車を全廃するために、2代目「ビスタカー」10100系の機器を流用し、当時の典型的な近鉄電車の車体を載せて作られたものです。案外知られていないのですが、モーターは山陽電車でも同じもの(三菱MB-3020)が長らく使われていました。3両編成なので、主に名古屋線の普通・準急で使用されているほか、一部の編成はワンマン運転にも対応しており、湯の山線鈴鹿線で使用されています。名古屋線に全車が配置されていますが、大阪線名古屋線で共通化された後の車両ということで抑速ブレーキを装備しているため、青山峠を越えて上本町まで行けます。「つどい」に改造後は京都や難波、果ては桜川まで顔を出したこともありました。

改造内容は、ク2107が子供向けスペースと座席、モ2013がイベントスペースとバーカウンター、モ2014が座席と子供向け運転台です。運転台は子供向けとなっていますが、廃車になった1810系から本物のマスコンブレーキ弁が流用されました。

座席は全て窓側を向いており、伊勢湾・英虞湾を眺めつつ飲食ができます。バーカウンターでは、志摩地区の特産品をふんだんに使った料理・おつまみが提供されます。また、車内で販売もされます。

日によっては、海女さん、志摩地区のゆるキャラ、パルケエスパーニャのマスコット*18も乗り込んで、トークショーや撮影会など様々なイベントが行われます。

原則として、休日に2往復運行します。それ以外の日には他の路線で貸し切り列車として運行されることがあり、直近では「きんてつ鉄道まつり2017」の塩浜会場へのツアー列車として鳥羽から運行されたほか、塩浜から白塚まで洗車体験をしに行くツアーも行われました。

*1:かつては名古屋線大阪線でも車両が分けられており、きつい勾配がない名古屋線では抑速ブレーキは不要とみなされて省略されていた

*2:ちなみに、シリーズ21や近年の特急車は前に押し込む

*3:難波~上本町では、基本的に奈良線の電車のみ乗り入れるようになっているほか、日本橋から上本町へ向かって上り急こう配が存在する。故障して地上に上がれないという事態を避けるため、奈良線の電車と連結して走れるよう、特急は奈良線の電車と向き・マスコンの操作方法が揃えられている

*4:例:大和西大寺のつもりで単に「西大寺」と打ち込んだら、岡山県西大寺駅が出てきてしまった

*5:かつては上本町~鳥羽、150kmを走破する快速急行があった。急行は今でもあるらしい

*6:各車両の一番端の席以外は全席転換できる

*7:昔の近鉄の通勤電車は、中間車では大阪方と奈良・伊勢方で車端部の長さが異なっていた。長距離急行用の車両では長い方にトイレが付いていた。ただし、大阪方の車端部が長いものと奈良・伊勢方の車端部が長いものが混在している。近鉄では2両編成を複数組み合わせて編成を長くすることがよく行われているが、中間車の窓のレイアウトを前後非対称にすることで、先頭車だけで編成を組んだときとドアの位置がそろうようになっている

*8:名古屋駅の構造上、改札に近い車両が混む。改札から離すため

*9:初期の大型高性能車で、3ドアか4ドアのどちらがよいか比較検討するため、大阪線に3ドアの1460系、南大阪線に4ドアの6800系が投入されたが、そのときも「4ドアの方がよい」ということになった。そのため、近鉄の大型高性能車で3ドア車はモ1450形・1460系・5200系のみ

*10:近鉄では特急以外乗車位置表示がない。ただし例外として、名古屋駅には付いているほか、奈良線近鉄電車と阪神電車でドアの数・位置が違う上に、優先座席の位置も違うため(近鉄は奈良方、阪神は神戸方)全駅で付いている

*11:特急とは異なり、伊勢中川の短絡線を通らないため、山田線・鳥羽線志摩線では発着地にかかわらず向きは同じ

*12:通常の座席とは別建てで振られていた

*13:標準軌化の前後には、6000番台でありながら標準軌の台車を装着して新造されたものもあった

*14:1973年までは、京都線橿原線の車両限界・建築限界が大阪線より小さかったため、東海道新幹線の開通に当たって京都発着の特急を設定する際は小型の特急用車両を必要としていた。18000系・18200系は幅2590mm・全長18640mm、18400系は橿原線の限界拡大工事が一部完成していたため可能な限り大型化して幅2670mm、全長20640mmになった。橿原線の工事が完成した後、標準軌路線の特急車はすべて共通化された

*15:例:京王電鉄。1372mmの京王線系統と、1067mmの井の頭線

*16:「垂直カルダン」なるシステムが開発され、762mmの車両でも使えないかと模索していたようだが、構造が複雑すぎ、さらに複雑なシステムを狭い床下に押し込んだために整備性が悪く実用にならなかった

*17:近鉄では、大阪側で新幹線とは接続していないが、その代わり?京都駅で接続している

*18:ビスタカーのデッキにぬいぐるみが飾ってあるほか、かつてはビスタカーの両先頭車の帯が「V」になっているところの上にステッカーを貼って立たせていた。