今年も網干にやってきた

今年も、「網干総合車両所ふれあいフェア」へ足を運んできました。

今回は、昨年なかったものを中心に取り上げます。

Aシート

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223系「Aシート」車

その昔、京阪神地区の快速(関東で言うところの中距離電車)にもグリーン車がありましたが、利用状況が芳しくないため1980年10月のダイヤ改正で廃止されました。

ところが、30年以上時が下って、京阪電車に「プレミアムカー」が登場して好評を博すなど、特別料金を必要とする上位クラスの座席が求められるようになりました。
そこでJR西日本も、新快速に上位クラスの座席を導入することとなり、先日のダイヤ改正で「Aシート」として導入されました。

手始めに、223系1000番台の付属編成(V編成)2本を改造して、姫路(平日のみ1往復が網干発着)~野洲の2往復で運行されており、米原敦賀湖西線には顔を出していません。

側面のみ色が変わっており、中央のドアを封鎖したこともあって521系125系を掛け合わせたかのように見えます。先頭部分は色が変わっていません。

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「Aシート」の座席

中距離電車にしてはやけに装備が充実しており、座席は287系と同等のものですが、全席に100Vコンセントが付いている*1ほか、無料Wi-Fiサービスも展開されています。これらは、JR東日本中距離電車グリーン車でもまだ付いていない*2装備です。

ただし、事前にきっぷを買って座席指定を受けてから乗る京阪電車プレミアムカー*3とは異なり、乗って着席してから料金を支払うシステムのため、乗らないと空席があるかどうかわかりません。姫路駅ですでに満席のこともあり、実際に京都駅まで利用した際は大阪駅まで座れなかった、ということもありました。この点を改善しないと過去のグリーン車と同じく大失敗するでしょう。

なお、JR東日本中距離電車グリーン車とは異なり*4、座れなかった場合は料金は不要です。そのため、10号車から移動してトイレを使うことは何ら問題はありません。

683系ではありません

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683系ではなく289系

上記の「Aシート」とも関連しますが、着席して通勤したいという需要は関西でも確実にあるようです。以前は座席定員制の通勤列車として「びわこライナー」、「ほくせつライナー」、「やまとじライナー」、「はんわライナー」がありましたが、神戸・姫路方面にはこの手の列車はありませんでした。

先日のダイヤ改正通勤特急「らくラクはりま」号が設定され、神戸・姫路方面から大阪への着席需要に応えるようになっています。朝と夕方に1本ずつ運行され、夕方は「はまかぜ5号」や「スーパーはくと13号」と合わせて通勤需要を担います。

新快速とは異なり、三ノ宮~大阪がノンストップとなっています。

車両は「くろしお」用の289系(←683系)が間合いで担当します。

223系1000番台リニューアル

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223系1000番台リニューアル車

JR西日本では、製造から20年以上経過した車両に対してリニューアル工事を施工しています。同様の工事は関西の他社でも広く行われており、大阪メトロでは「中間更新」、阪神電車では「リノベーション」という名称などで行われています。

以前は103系113系などが中心でしたが、これらは全車両に対して施工したわけではなく、あまりにも製造からの期間が長い車両に関しては施工せず新型車両に置き換えて廃車しており、また施工してからもかなりの期間が経過しているため、施工済みの車両も大部分が廃車されています。

2010年代に入ると、221系以降の車両もリニューアルされるようになりました。そして、昨年から今年にかけて223系でもリニューアルされた車両が登場しました。

余談ですが、展示中に「和邇」や「城崎温泉」を表示していました。行先表示器には、JR西日本の主要な駅名が入っているようです。

工事内容

概ね、207系と共通のメニューで施工されていますが、223系で追加されたメニューもあります。

  • 灯火類のLED化(これに伴い、0・1000番台はテールランプの位置が上がった)
  • 方向幕のフルカラーLED化(種別表示器も交換)
  • トイレを車いす対応大型タイプに更新
  • 1・4号車に車いすスペースを設置
  • 床下の電子機器・半導体部品を交換

0番台のリニューアル車は、元々ヘッドランプがあった場所にLEDの灯火類を全部押し込んだため変な並びになっています。1000番台も同様に全部押し込んだものの、施工前はヘッドランプとフォグランプが横並びになっていてスペースが横長であり、そのスペースを生かしてテールランプも加えて3つ横並びになっており、そこまで違和感はありません。

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223系0番台リニューアル車(灯火類に注目)

洗浄線

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洗浄する列車の先頭からの眺め

網干総合車両所の南の端には、車両の洗浄を行う線路があります。洗浄は2段階で行われており、最初は洗剤をつけて汚れを浮かせ、2回目はブラシで落とすという手順です。

2000年に鷹取工場を統合し、網干総合車両所として機能が拡充される前の「網干電車区」時代は、山陽本線の上下線に挟まれるような形で立地しており、洗浄線のさらに南側にある線路は元々山陽本線の下り線でした。
その関係で、網干駅も構内配線が変更され、従来は3番線が下り本線だったのが、2番線が下り本線に変更され、3番線は車両所内に出入りする副本線となっています。したがって、大阪方面からの網干行き電車は3番線に到着し、入庫します。ただし、姫路止まりで姫路駅から回送するものもあり、その場合は3番線ではなくその南側の線路を通って入庫します。
大阪方面の始発列車は、下り線を横切って出庫し1番線から出発しますが、入庫せず3番線で直接折り返すこともあります。また、播州赤穂・上郡からの列車で、網干から12両編成で運行する列車は、1番線では連結作業ができないため下り線を横切って3番線に入り、3番線で連結してから大阪方面へ向かいます。

本当に石炭を焚いて走る

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本当に石炭を焚いて走る

ここ最近の網干のイベントといえば、ミニSLですが、このSLは本格派で、本当に石炭を焚いて走ります。そのため、運行の合間に水道から給水したりするのが見られました。

灯火類を点灯

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ヘッドライトを点灯させたトワイライトエクスプレス

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テールランプを点灯させた状態

昨年に続いて、今年も「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」が展示されましたが、今年は終盤にエンジンをかけて、灯火類をつけていました。

この車両の灯火類は、構造がN700系に似ており、HIDヘッドライト・フォグランプを赤いLEDが取り囲むという構造です。

丸いヘッドライトとフォグランプをテールランプが取り囲み、また灯火類のユニットも丸いため、テールランプをつけると往年のスカイラインのように見えます。

旧世代・新世代

工場内に「旧世代」と書かれているものがあります。これはJR西日本における車両の分類で、概ね、国鉄時代のものが「旧世代」、221系以降が「新世代」に分かれています。

旧世代

新世代

ただし、旧世代と新世代の間に「中世代」というのもあるらしく、インバータ制御ではないものの回生ブレーキが使える車両(201系・205系・213系・221系)がこれに該当します。
221系は「新世代」に入るのですが、足回りが211系・213系と同じで120km/h対応がなされており、国鉄時代の設計を引きずっています。

「新世代」車両の特徴として、全車両が(環状線専用としている323系であっても)寒冷地仕様となっているのがあげられます。

*1:271系が登場するまで、在来線特急で普通車の全席にコンセントが付いた車両はなかった。新幹線ではW7系で初めて全席に装備

*2:JR東日本では、横須賀線ver.のE235系グリーン車で初登場

*3:このためにネット予約システムも構築した

*4:デッキに立つだけでもグリーン料金を請求される