スルッとKANSAI完全終了のお知らせ

阪急、阪神、能勢、北急におけるICOCAおよびICOCA定期券の発売:JR西日本

阪急、阪神、能勢、北急におけるICOCAおよびICOCA定期券の発売について|ニュースリリース|阪神電気鉄道株式会社

http://www.hankyu-hanshin.co.jp/file_sys/news/5840.pdf

1996年に始まった、全国初の乗車カードの広域ネットワーク「スルッとKANSAI」ですが、全国的に進んでいるICカード化に伴い、昨年3月末をもって発売を終了し、2018年1月末までは自動改札機で共通利用することができました。現在はそれぞれのカードの発行元で払い戻しを受け付けているほか、一部事業者(近鉄など)では自動券売機・精算機で使用することができるようです。

スルッとKANSAIでも独自のICカードとして「PiTaPa」を発行していますが、ICOCAなどとは異なり「ポストペイ(後払い)」というクレジットカードとなんら変わらないシステムを採用しています。ゆえに、発行時は一般的なクレジットカードと同じように審査が必要であることから、非常に手続きが面倒なため、ICOCAなどと比べると非常に発行枚数が少なくなっています。
各社ともポストペイならではの割引制度を充実させているのですが、定期券と比べると割引率が低く、また一部を除き定期券をIC化できないため、定期券のユーザーを取りこぼしてしまっています。

そのため、スルッとKANSAI加盟各社で独自のプリペイド式(ICOCAなどと同じ方式)のICカードを導入するという報道もありましたが、現実的なところで、JR西日本と提携してICOCAの取り扱いを開始し、そちらに移行するというようになりました。2011年の京阪電車、2012年の近鉄を皮切りに、2017年春には阪急阪神東宝グループではない事業者は一通り取り扱いを始めています。
また、JR西日本と私鉄・地下鉄の連絡定期券も、JR西日本での発行分はICOCAに対応し始めており、こちらは阪急・阪神でも対応しています。先行して導入した京阪・近鉄などでは、JR西日本が関係しない連絡定期券や、自社線内のみの定期券もICOCAで発売しており、近鉄に至ってはJR東海TOICA)や名鉄manaca)との連絡定期券も出しています。

話を定期券ではないICカードに戻すと、阪急阪神東宝グループのうち、神戸電鉄北神急行電鉄を除く4社(阪急電鉄能勢電鉄阪神電気鉄道北大阪急行電鉄)ではICOCAは取り扱わず、スルッとKANSAIカードの発売終了後もこの4社独自のカードとして「阪急 阪神 能勢 北急レールウェイカード」を発売していました。すでに発売済みのカードは、この4社に限り2018年2月以降も引き続き使用できます。

ところが、今日になってこの4社でもICOCAを発売すると突然発表されました。すでにJR西日本発行分の連絡定期券はICOCAで出されていますが、自社線内のみの定期券や、単なる乗車券タイプのものも取り扱われます。
これに伴い、“レールウェイカード”は来年春に発売を終了し、秋には自動改札機での利用を終了します。

関西でも、ついに磁気カードの時代が終わりを告げることになりました。残るは各社の専用タイプだけです。

阪急以外とは接続していない能勢電鉄はともかく、“レールウェイカード”エリア内の各社は非対応の路線(ICOCA取り扱い各社)に乗り入れているということもあり(阪急⇔Osaka Metro阪神⇔山陽・近鉄、北急⇔Osaka Metro)、うっかり乗り越してしまい、面倒なことになったとクレームが多かったのではないかと推測できます。また、JR西日本でもPiTaPaの割引制度を導入することが先に発表されており、そのバーターともとれます。
そもそも、阪急阪神東宝グループの内部でも乗車カードに対する態度に温度差があり、神戸電鉄北神急行電鉄は真っ先にICOCAに切り替えたほか、電子マネーにしても、阪神駅ナカにはICOCAで支払いができる店があります。

スルッとKANSAIのあゆみ

スルッとKANSAI以前に、関西圏の私鉄ではJRでいうところの「オレンジカード」のような、乗車前に切符に引き換えて使うプリペイドカードが発行されていました。近鉄の「パールカード」*1大阪市営地下鉄の「タウンカード」、阪神電車の「ハープカード」などがありましたが、阪急の「ラガールカード」も、1989年の登場当時は券売機と精算機のみで使えるオレンジカード的なものでした。これは、自動改札機のシステム改修が間に合わなかったためで、自動改札機で使えるようになったのは1992年と、JR東日本営団地下鉄(両社とも1991年に開始)に先を越されました。それでも、日本の私鉄では初めてのストアードフェアシステムでした。JR東日本イオカード)や営団地下鉄(NSメトロカード)では当初一部路線でしか使用できなかったため、自社の全線で使えるものは阪急が初めてでした。

1994年には能勢電鉄でも「パストラルカード」を発売し、全く同じシステムを導入して共通利用できるようになりました。2社以上でのカードの共通化はこれが初めてです。ここで実績を積み上げ、1996年には阪神電車大阪市営地下鉄北大阪急行も自動改札機の更新と同時に参加して「スルッとKANSAI」に発展しました。

年表(磁気カード)

※電車のみ

在阪の大手私鉄のうち、近鉄は2001年とかなり後になって導入していますが、これは近鉄と阪急の関係が悪く、阪急主導のシステムを導入することを渋っていたためとされています。近鉄はどちらかというと親JRであり、同時期にはJスルーカードも導入しています。のちのICカードも、在阪大手私鉄では最後発であり、2012年以降はICOCAをメインに据えています。

年表(ICカード

カードの名称

*1:同じ「パールカード」を名乗るカードでも、「パールカード11」はカードタイプの回数券であり、オレンジカードのようなものではない

*2:近鉄では、KIPSポイントカードと一体化した「KIPS ICOCA」も発売開始

*3:スルッとKANSAI非対応の「Kカード」もあったため、「スルッとKANSAI」を冠している

*4:スルッとKANSAI非対応の「トラフィカ京カード」と合わせると「京都」になる