ならしかトレイン

近鉄では、12月5日より奈良線を中心に「ならしかトレイン」なるラッピング電車を運行します。運行開始を前に無料試乗会が行われ、先日参加してきました。

上本町の地上ホームに入ってきた「ならしかトレイン」

スタート地点は大阪上本町駅の地上ホームです。大阪線の列車が発着するホームなので、ここに奈良線の車両が出入りすることは異例です。
しかも、9番線からスタートです。9番線は上本町始発の特急が使うホームですが、特急の始発駅が難波にシフトしていることや*1、昼間の上本町発着の特急がなくなったため、昼間は空いています。

9番線から乗り込み、奈良へ向かいます。上本町の地上ホームからは、線路は鶴橋駅の2番線にしかつながっていません。このまま道なりに行くと大阪線に入ってしまいますが、奈良方に奈良線への渡り線があります。奈良線から大阪線に入る渡り線は、難波発の名阪・阪伊特急が使うためよく知られていますが、逆方向の渡り線はあまり使うことがありません。もちろん、3番線(難波・尼崎・神戸方面)・4番線(上本町駅地上ホーム行き)の場合はその逆で、大阪線から奈良線に入る渡り線は難波行きの名阪・阪伊特急が使いますが、逆に奈良線から大阪線に入る渡り線はめったに使うことがありません。今回は3部制で行われたので、奈良に着いてから折り返してきた列車が、上本町の地上ホームに入る際にこの渡り線を通ってきました。

鶴橋駅では2番線に到着しますが、招待された客だけが乗る列車なので、ドアは開けないでしばらく停車してから出発します。この他、布施と大和西大寺でもしばらく停車しました。

今回は上本町から奈良まで1時間かけて走りました。この区間快速急行で40分弱なのになぜこんなに時間がかかるのかと言うと、途中で3回も通過待ちをしたためです。八戸ノ里・瓢箪山東生駒で通過待ちをしました。一方で、全列車が停車する生駒・学園前を、客を乗せた列車が通過するという貴重な経験もしてきました。

←大阪・神戸 6 Mc 5 T 4 M 3 T 2 M 1 Tc
VH27 モ1027 サ1177 モ1077 サ1197 モ1097 ク1127

招待状には「4号車」と書かれていました。ただ、近鉄では一般車両の号車表示がないため、最初はどこかわからなかったのですが、実際は特急と同じく奈良方から1,2,3…という順番でした。

車内

「ならしかトレイン」車内

車内に入ってまず目に入るのは、奈良公園若草山を思わせる緑の床と、鹿柄のロングシートです。

優先座席の色が違う

ここ最近、近鉄電車の優先座席はオレンジで区別されていますが、この編成に限っては一般座席が茶色いため、区別が付きにくくなることから、優先座席は緑となっています。背中こそ他の優先座席と同じ柄ですが、座布団に鹿が描かれています。1匹だけ白いのがいます。

鹿がぶら下がる吊り革

座席前の長い吊り革にも鹿があしらわれており、「鹿せんべいに寄ってくる鹿」がモチーフとなっています。

網棚で寝ているように見える

各車両の1カ所だけ、網棚で鹿が寝ているように見えるところがあります。

弱冷車ステッカーも特別仕様
戸袋に角や手足を引き込まれないようご注意ください
貫通路を通行する際の注意

この他、車内の各所に鹿があしらわれています。弱冷車(奈良方から2両目)のステッカーも、この編成だけの特別仕様です。

大和西大寺駅にさしかかる、「ならしかトレイン」試乗会列車(第3便)

この車両のイラストを担当したのは、兵庫県三田市出身のイラストレーター「げみ」さん(http://gemi333.com/)です。教科書や小説のイラストで知られる他、最近ではポケモンカードゲームのイラストも担当しています。

この車両は阪神線直通対応ですが、通常貼られているステッカー(下の写真で運転席の下にあるステッカー)が貼られていません。

通常は、阪神線直通対応車両は運転席の下に蝶々マークのシールが貼られる

あをによし(19200系)

大和西大寺駅に入る京都行き「あをによし」

近鉄の観光特急シリーズ第3弾で、ターゲットは奈良です。伊勢志摩に「しまかぜ」、吉野に「青の交響曲(シンフォニー)」ときたら、奈良には「あをによし」です。
「あをによし(青丹よし)」とは、奈良にかかる枕詞です。

先日引退した12200系「スナックカー」を仕立て直したもので、生い立ちは16200系(青の交響曲)と似ています。形式も12200系から、千の位を9*2に変えて「19200系」となりました。

←大阪・京都 4 Mc 3 T 2 M 1 Tc
SA01 モ19201 サ19351 モ19251 ク19301
旧番号 モ12256 サ12156 モ12056 ク12356

この編成は12200系の最終編成で、デビューして間もない時期にエリザベス女王昭和天皇が乗車されたことでも知られています。

車体には大幅に手が入れられ、貫通扉を埋めて3連窓にしているほか、色は平安時代に高貴な色とされていた紫を基調にまとめられ、「ひのとり」と同じようなメタリック塗装がされています。
その一方で、側面の方向幕は12200系時代から変わっていません。そのため、表示は「大阪難波ゆき」、「京都ゆき」、「奈良ゆき」となっています。方向幕には全く手を入れていないため、今でも「名古屋」や「宇治山田」などの表示が残っているほか、動き方も1コマずつの間欠動作です。

奈良への観光特急ですが、運行区間は大阪・京都の両方からです。ただし、「しまかぜ」のようにそれぞれで独立した系統を設定するのではなく、午前中に大阪から奈良を通って京都まで行き、昼間は京都~奈良を2往復し、夕方に京都から奈良を通って大阪へ戻るというものです。近鉄特急で大阪~京都の系統(阪京特急)が設定されるのは30年ぶりです。

京都~奈良のみの場合、停車駅は丹波橋西大寺だけで、他の特急と変わりはありません。
大きく違うのは朝と夕方に大阪~京都を直通する場合で、30年前の阪京特急は奈良駅まで行かず西大寺で方向転換していたため*3、途中の停車駅は上本町・鶴橋・生駒・学園前・西大寺(当時の特急は丹波橋には停車せず)だけでした。
ところが、「あをによし」は奈良への観光特急という性格上、奈良駅まで行く必要が出てきました。そのため、奈良駅まで行って折り返すことになり、西大寺~奈良を2回通るようになりました。運賃・料金に関しては、奈良駅で下車せず大阪方面と京都方面を行き来する場合に限り、西大寺~奈良の分は含めずに運賃・料金を計算します。

停車駅が独特で、西大寺を2回通るのですが、京都線に出入りする際にはドアを開けて乗降できるようにしているのに対して、奈良線に出入りする際は通過扱い(運転停車)となっています。案内上は「通過」ですが、実際は他の列車との兼ね合いもあり、一旦停車してから出発していました。実際、夕方の難波行きは京都行き急行を先に行かせてから出発していました。

難波から京都まで、停車して客扱いをする駅を並べると、上本町・鶴橋・生駒・学園前・奈良・西大寺丹波橋の順番になります。奈良駅を出ると、京都行きは「次は西大寺」、難波行きは「次は学園前」と案内されます。

副駅名「奈良公園前」

副駅名「奈良公園前」が入った近鉄奈良駅駅名標

奈良駅はJRと近鉄にありますが、主要な観光地に近いのは近鉄奈良駅です。中心市街地に近い故、乗降客数は奈良県内No.1で、奈良県内の駅で唯一3万人を超えています。

その近鉄奈良駅から奈良公園へは、駅を出て東側へ歩いて5分程度の場所にあります。この度、奈良公園など奈良の主要な観光地の最寄り駅であることがわかりやすいよう、近鉄奈良駅に「奈良公園前」という副駅名が付けられました。

これに合わせて駅名標も取り替えられ、鹿のイラストが入ったものとなっています。また、英文でも副駅名が付けられ、Nara Parkと記されています。近鉄で他に副駅名がある駅は、副駅名は日本語表記のみとなっています。

駅名を変更する場合は国土交通省に届け出る必要がありますが、副駅名は自由に付けられるため、著名な観光地などの最寄り駅をアピールする手段としてよく使われています。

*1:一時期、名阪特急は難波発着、阪伊特急は上本町発着と分けられていたが、2003年のダイヤ変更以降は棲み分けが崩れて難波発着の阪伊特急が増加し、「しまかぜ」も当初から難波発着で設定されている。逆に、2016年のダイヤ変更までは上本町発の名阪特急が平日に1本だけあったが、現在でも上本町終着の名阪特急が平日に1本ある

*2:かつての奈良・京都線車両は千の位が8・9と決まっていた。そのため、1960年代に走っていた京都・橿原線向けの小型特急車は千の位を8にして、18000系・18200系・18400系だった

*3:京都~大阪の直通を主目的としていたため。京阪間の鉄道は国鉄・阪急・京阪の3社があり、この3社は大阪側のターミナルが梅田や淀屋橋、いわゆる「キタ」に集中しているが、これが難波など「ミナミ」となると、京都からはどの社も直通列車の設定がなく乗り換えを必要としていた。近鉄はそこに目を付け、1973年3月のダイヤ変更で西大寺で折り返してまで特急を設定し、京都と大阪ミナミを直通する潜在需要を掘り起こそうとしていたが、京都・大阪~生駒・西大寺区間利用が多く、京都~大阪の直通客は少なかった。そのため、1992年のダイヤ変更で京奈特急と阪奈特急に分割されて消滅した。なお、この阪京特急が奈良線では初の有料特急で、その半年後に阪奈特急も設定された

*4:東大阪市は3つの市(布施・河内・枚岡)が合併してできたため、その名残で「東大阪」という駅はない。2003年に荒本駅の近くへ市役所が移転した後、東大阪線学研奈良登美ヶ丘まで延伸する際に路線名が変わってしまうため、せめて駅名に「東大阪」を残そうと荒本駅を「東大阪駅」に改称しようという機運が一時的に盛り上がったことがある