きんてつ鉄道まつり2022

新たなる紅き近鉄特急

しばらく開催されていない間に、近鉄の看板列車として知られる名阪特急に新型車両80000系「ひのとり」が導入され、2021年には停車駅が少ない名阪特急が全て「ひのとり」にそろえられました。
今年に入ってから、急がないときは鶴橋や難波から「ひのとり」で名古屋へ足を運んでいます。

五位堂会場では、付近を「ひのとり」が通過する際にアナウンスがありました。名古屋行きは毎時22分頃、難波行きは毎時41分頃に通過していました。

五位堂検修車庫の横を通過する名古屋行き「ひのとり」
五位堂検修車庫の横を通過する大阪行き「ひのとり」

帰り道にも撮れました。このうちの1枚はよく撮れたので、2L判でプリントしています。

五位堂駅を通過する「ひのとり」第15列車
近鉄四日市駅を通過する「ひのとり」第65列車

車両数は21000系と同じ72両で、6両編成が8本、8両編成が3本あります。ただし、21000系は6両編成に増結用の2両ユニットを挿入して8両編成にするのに対して、80000系は別に8両固定編成が用意されています。8両編成は下2桁を50番台として区別しています。

また、80000系は標準軌の特急車両としては初めて、日立製の主要機器が一部の編成で採用されています。50000系までの標準軌の特急車両は、足回りは全て三菱電機製でした。足回りが日立製の編成は、下2桁を10番台として区別しています。

  • 6両編成・足回りが三菱:01-04
  • 6両編成・足回りが日立:11-14
  • 8両編成(足回りは三菱のみ):51-53

ノンストップの距離がえげつない

鶴橋で環状線から乗り換えて五位堂へ向かう際、たまたま快速急行に乗ることができました。この快速急行はなんと、鶴橋を出ると五位堂までノンストップです。実に26kmも走り続けることになります。

なぜここまでノンストップ区間が長いのかというと、近鉄各線の急行・快速急行は主に奈良県内(奈良線生駒市奈良市大阪線は中和・東和地区)や伊賀地方から大阪市内への速達種別として位置づけられており、客層を分けるためにあえてノンストップ区間を長くしています。その中間の地区(東大阪市・八尾市・柏原市)の速達需要は準急・区間準急が受け持つようになっています。近鉄線は朝は大阪方面、夜は奈良方面に需要が偏っている上に*1大阪線だと伊賀地方から大阪へ通勤する人もいるため、このような停車駅の設定になっています。

1960年代の「快速急行」ではなく「急行」*2だった時代は五位堂どころか大和高田も通過しており、さらにかつての急行は布施も通過していたため*3、鶴橋から大和八木まで33.7kmに渡ってノンストップで運行していたこともありました。
また、五位堂駅には1987年のダイヤ変更まで準急以下の列車しか停車しなかったため、急行は布施から大和高田まで、快速急行(2001年のダイヤ変更まで五位堂は通過)と区間快速急行(2012年のダイヤ変更で廃止)は鶴橋から大和高田までノンストップでした。

奈良線でも同様に、快速急行は鶴橋を出ると生駒までノンストップとなっています。ただし、1976年のダイヤ変更までは旧・特急(1972年のダイヤ変更で快速急行に改称)の名残で、朝の上り列車に大和西大寺から鶴橋までノンストップの列車がありました。

逆向きのアーバンライナー

逆向きで五位堂検修車庫に入ってきたアーバンライナー

通常、アーバンライナーのデラックスカーは名古屋方面の先頭に立ちますが、この時に限って大阪方面の先頭にありました。

というのも、この編成は開催数日前に名古屋線で踏切事故に遭遇し、修繕のために五位堂まで来たのですが、その際に伊勢中川の短絡線を通らず、一旦伊勢中川駅に入ってから五位堂まで回送されたためです。近鉄特急の車両の向きは、伊勢中川の短絡線を通る名阪特急が基準となっており(伊勢志摩ライナー*4・しまかぜを除く)*5伊勢中川駅に入って折り返すと大阪線では向きが逆になります。*6

おそらく、何らかの理由(一般車*7を救援車に用いた?)で伊勢中川の短絡線を通ることができず、伊勢中川駅経由で回送ということになったと見られます。

ひのとりタクシー

柏原市内を中心に走る「ひのとりタクシー」

近鉄特急のフラッグシップ「ひのとり」をPRするため、近鉄タクシーグループではトヨタ・ジャパンタクシーを「ひのとり」カラーに塗った「ひのとりタクシー」を大阪市内や名古屋市内、伊勢志摩エリアで走らせています。塗装は自社の整備工場で行っています。

以前、名古屋駅前(桜通口)で営業しているところを見たことがありましたが、今回は近鉄タクシーが出展しており、じっくり見ることができました。

なお、塗装こそ「ひのとり」と同じですが中身は普通のタクシーです。

7000系 in 五位堂

五位堂で検査中の7000系

五位堂検修車庫では近鉄のほとんどの車両の検査を行っていますが、近鉄の路線の中には軌間の異なる路線(南大阪線御所線・長野線・吉野線)や、集電方式・電圧の異なる路線(けいはんな線)があります。実際は、これらの路線の車両も五位堂へ持って行って検査をしています。

今回は、けいはんな線7000系が五位堂に入庫していました。けいはんな線は、軌間こそ奈良線橿原線大阪線と同じ1435mmですが、集電方式と電圧が異なり750Vの第三軌条方式です(他の近鉄線は1500V・架空電車線方式)。したがって、五位堂まで自力で走って行くことはできません。

そこでどのようにして五位堂まで運ぶのかというと、けいはんな線の車庫(東花園検車区東生駒車庫)は東生駒にあり、そこで線路が繋がっています。ここで3両ずつに分割し、集電装置と出入り口のステップを外して前後に電動貨車(モト77・78)を連結して回送します。
その際、電動貨車に何も積んでいないと牽引力を稼げずスリップしてしまいます。南大阪線系統の車両は台車を回送用のものに交換し、いつも使用する台車を電動貨車に積んで錘にして牽引力を稼ぎますが、7000系・7020系の場合は台車交換が不要なことから錘になるものがありません。そのため、わざわざコンクリートのブロックを積んでいます。

また、けいはんな線の場合は集電方式だけではなく車両そのものの寸法も異なります。一般的な近鉄の車両は全長が21m、幅は2.8mありますが、けいはんな線は大阪メトロに合わせて全長が18m、幅が2.9mとなっています。これは、けいはんな線より前の東大阪線の原型が、1971年に出された大阪市営地下鉄中央線の生駒への延伸計画奈良線のバイパス路線として考えられていた)だったためで、荒本(後に長田)を境に西側を市営で、東側を近鉄が建設して相互直通運転を行うように考えられていました。このため、必然的に大阪市営地下鉄の規格に合わせられることになり、他の近鉄の車両とは全く異なる車両が必要となりました。
しかし、設計段階で重要部検査は五位堂で行うことを念頭に置いており、近鉄線の車両限界に引っかからないよう、奈良線の車両と比べると大きく裾を絞っています。そのため、ホームと車体の間に隙間ができてしまうので、ドアの下にステップを付けています。

この他の相違点としては、連結器の形状があります。実は、大阪メトロの連結器は一見近鉄と同じような柴田式密着連結器のように見えますが、微妙に形状が異なります。そのため、7000系・7020系の先頭部と3・4両目の間の連結器は大阪メトロタイプとなっており、モト77・78は前後で連結器の形状が異なります。

近鉄最後の電気機関車

塩浜で入換車両として使われるデ32

かつては近鉄でも電気機関車がいくつか所属していました。これらの車両は、合併する前の各社が国鉄と連携して貨物列車を走らせていましたが、その列車に使用するための電気機関車近鉄が引き継いだものでした。
近鉄から貨物列車が姿を消してからも、一部は工事列車の牽引用に残され、名古屋線標準軌化に当たってはその対応工事を施工したものもありました。

しかし、工事列車は電動貨車が担当するようになって電気機関車も少なくなり、塩浜で構内入換車両として使われているデ32が、近鉄では最後の電気機関車です。

阪神電車(5500系・5550系)のような色ですが、れっきとした近鉄の車両です。

ミジュマルトレイン

ミジュマルトレイン(モ1266-ク1366)

2021年12月にミジュマルが「みえ応援ポケモン」に任命されました。
「三重」がミジュウとも読め、「ミジュマル」の名前と親和性があります。
また、ミジュマルはおなかに貝のような見た目の「ホタチ」を持つ特徴があり、真珠貝(アコヤガイ)や牡蠣など貝類をはじめとした海の幸にも恵まれている三重県をPR・応援するには、ぴったりのポケモンです。
三重県ミジュマルのさまざまな取り組みを通じて、ミジュマルといっしょに三重県の魅力を発見してほしいという思いから、選ばれました。

展示だけで車内は見られませんでしたが、車内も大幅に手が入れられています。

ワンマン運行に対応しており、主に山田線・鳥羽線志摩線の各駅停車で使用されています。

30年目の再出発

リニューアル「楽」
真正面から

近鉄には、他の私鉄では見られない貸切専用車両があります。そのうちのひとつが、1990年に登場した20000系「楽」で、貸切料金はこれが最高額となっています。
その「楽」ですが、2020年に登場30年目にしてリニューアルを行いました。近鉄の他の車両は概ね20年程度でリニューアルを行いますが、貸切専用車両ということで走行距離が少ないため、30年目でのリニューアルとなりました。

まず、塗装が大幅に変わり、阪急電車を思わせる「漆メタリック」となりました。
内装にも大幅に手が入れられ、座席が広くなった代わりに定員が164名(改造前は260名)まで減らされ、そのために特別料金がかかるようになりました。

時折、この車両を用いたツアーをやっているので、参加して中身を確かめることにします。

左:15200系「新あおぞらII」 右:15400系「かぎろひ」

近鉄の他の団体専用車両としては、12200系「スナックカー」を改造した15200系「新あおぞらII」と、15400系「かぎろひ」があります。
「新あおぞらII」は18200系「あおぞらII」の後継として位置づけられており、初代あおぞら号(20100系)を受け継いで主に修学旅行列車として使用されています。なお、ネーミングは「新あおぞらII」であり、「あおぞらIII」ではありません。
「かぎろひ」はクラブツーリズムのツアー専用車両として位置づけられています。

Hearty Trip 三重交通

三重交通四日市営業所・1509号車(いすゞ・エルガ)

三重県唯一のバス会社、三重交通。その前身は伊勢電気鉄道(近鉄名古屋線の桑名以南と、養老線鈴鹿線を建設した)のバス部門で、戦時中に三重県内の中小私鉄・バス会社を全て統合して「三重交通」となりました。発足当初は鉄道路線(ローカル線)もありましたが、1965年に分社化し、近鉄に合併されたことでバス専業の会社になりました。
三重県内のバス会社は、伊勢市内の分社拠点(一時期、東紀州の営業所も分社化していた)や、松阪駅多気のシャープの工場(携帯電話などに使う小さいLCDの生産拠点)を結ぶ路線を運行する「三重急行自動車」、員弁川の南岸と桑名駅を結ぶ「八風バス」もありますが、これらは全て三重交通グループなので、実質的に三重県内のバス会社は三重交通のみ、と言っても良いでしょう。

新型エルガの運転席

この車両は三重交通で最新のもので、2019年式のいすゞ・エルガです。系列にいすゞの販売会社があるため*8三重交通いすゞ車ばかり走らせています。

最近のバスはMT車がなく、乗用車と同じようなトルクコンバーター式AT、または機械式AT*9のどちらかで、ペダルはアクセルとブレーキの2つだけです。
この車両は機械式ATですが、シフトレバーは乗用車のATに近いものとなっています。R・N・Dの3ポジションと、マニュアルモードが備わっています。
トルコンATの場合はレバーではなくボタンでポジションを選択するようになっています。ただし、メーカーによって操作系が異なり、R・N・DとUP・DOWNのボタンがあるもの、もしくはR・N・D・3・2・1の6ポジションをボタンで選択するものがあります。
いずれにせよ、駐車する際はNに入れておきます。P(パーキング)がないのは、バスなど大型車は重すぎ、内部構造の強度の関係により変速機でブレーキをかけることができないためです。

三重交通の車両の特徴といえば…

三重交通のバスといえば、窓の上に2つある広告枠です。最近入った新車でも受け継がれています。
ただし、数は少ないのですが他社から移籍してきた車両があります。移籍車両には付いていません。

他に、三重交通名古屋市バスの一部の営業所の業務を受託していますが、車両はあくまでも名古屋市バスのものなので、後部窓上の広告枠は付いていません。

*1:南海電車も同様で、朝は大阪方面、夜は泉州・和歌山方面に需要が偏っている。阪急・阪神・京阪だと、阪急宝塚本線こそ急行を宝塚・川西周辺から梅田への速達需要に特化させているが、他の路線は神戸・京都方面の需要も大きいため、遠近分離のダイヤが組みにくいという事情がある

*2:現在の急行は、布施駅の立体化が完成した1978年のダイヤ変更で布施駅に停車する列車として改めて設定されたもので、旧来の布施駅を通過する急行は朝夕に残され、区別するため「快速急行」と改称された

*3:立体化までは奈良線大阪線共に急行は布施を通過していたが、それぞれの急行は性格が対照的で、大阪線の急行が停車駅を絞って名古屋・伊勢志摩方面への長距離輸送にも対応していたのに対して、奈良線の急行は鶴橋を出ると石切までノンストップで残りの区間は各駅停車と、準急と大して変わりがなかった(なお、奈良線の急行は1976年のダイヤ変更で一旦なくなったが、1978年のダイヤ変更で復活した)

*4:2001年のダイヤ変更からしばらくの間、名阪特急の運用があり伊勢中川の短絡線を通っていたため、その時期は車両の向きが名阪特急を基準とされており、伊勢中川以南で向きが変わっていた

*5:大阪線名古屋線では向きがそろえられているために、伊勢中川以南では名古屋行きと大阪・京都行きで向きが異なる。そのせいで号車も異なっており、大阪・京都行きは最後尾が1号車(A号車)なのに対して、名古屋行きは先頭が1号車になっている。「しまかぜ」と「伊勢志摩ライナー」は発着地に関係なく向きは同じだが、他の特急と案内をそろえるため、号車の数字を大阪・京都行きと名古屋行きでわざわざ変えている

*6:大阪線名古屋線で向きの異なる編成が混在しないよう、宇治山田・五十鈴川・鳥羽・賢島で折り返す際は大阪・京都から名古屋へ行くことがないように運用が決まっている。ただし、1980年代の一時期には京都から来た編成が賢島で折り返して名古屋へ行くことがあり、その編成だけ名古屋線で向きが逆になっていたが、翌日に同じルートをたどって向きを戻していた

*7:一般車は伊勢中川の短絡線を通らず、大阪線名古屋線ではMc車が伊勢志摩方の先頭に立つようになっている。そのため、伊勢中川の短絡線を通してしまうと向きが逆になって、通常運用に戻る際に向きを戻す手間がかかってしまう。ただし、過去に奈良線から大阪線名古屋線に車両を転属させたときは、一時的な場合は向きを変えずに使っていたこともあったが、恒久的に使用する場合は伊勢中川の短絡線を使って向きを変えた

*8:ちなみに、「いすゞ」の名前の由来は伊勢神宮のそばを流れる五十鈴川

*9:構造こそMTと同じだが自動で変速する。メーカーによってはAMT(Automated Mechanical Transmission)やAGS(Auto Gear Shift)ということもある。かつて、いすゞはNAVi5やNAVi6という機械式ATを開発し、ジェミニ・アスカといったセダンや、エルフ・キュービックといった大型車に搭載していたことがあり、後にトラック向けの「スムーサー」へ発展する