NISSAN THE SPORTS

Kアリーナ横浜(KING SUPER LIVE)へ向かう道すがら、横浜駅から東へ向かうと日産自動車の本社があります。そこには日産ギャラリーがあり、最新の日産車を見て確かめることができるだけではなく、実際に横浜市内をドライブして体験できます。

日産といえば、昔からスポーツ系の車種が人気を博しており、セダンでもスポーティなグレード(セドリック&グロリアの「グランツーリスモ」、ブルーバードSSSなど)が売れ筋になっているという傾向もあります。

試乗車のラインナップには、地元の販社ではまず試乗できないGT-RフェアレディZがあり、この2車種は日産のスポーツカーのフラッグシップとして長く愛されてきました。

そんな2車種に、日産ギャラリーへ行けば乗れるということで、KING SUPER LIVEへの参加が決定してから、2週間前の日付が変わった瞬間に予約して乗ってきました。

試乗できる車種(2024年5月)

NISSAN GT-R(R35)

その昔、サーキットを席巻したスカイラインGT-R。その魂を受け継ぐクルマとして、2007年に登場しました。スカイラインとは縁が切れたものの、車体の形はクーペで*1、テールランプの形も丸形4灯で、型式も歴代スカイラインGT-RBNR34まで)から受け継いで「R35」となっています。

車両型式 4BA-R35
駆動方式 4WD(ATTESA E-TS
エンジン型式 VR38DETT
シリンダー V型6気筒
バルブ形式 DOHC・24バルブ
燃料噴射装置 電子制御ポート噴射
過給器 ツインターボ
最大出力 419kW(570PS)/ 6800rpm
最大トルク 637N・m(65.0kgf・m)/ 3300-5800rpm
変速機 6速デュアルクラッチトランスミッション
車両重量 1730~1785kg
燃料 ハイオクガソリン(レギュラーガソリン厳禁

今回乗車したグレードは2024年モデルのPremium Edition T-Specで、発売当時の価格は約1800万円でした。

この車は足回りの構造が他のFR車とは異なっており、通常はエンジンの真後ろに配置される変速機とクラッチが、後車軸にファイナルギアと一体化した状態で配置されています*2。これは、エンジンと並ぶ重量物である変速機を後部に配置することで、前後の重量配分を最適化するためです。

変速機も他の日産車とは異なり、日産では唯一となるデュアルクラッチトランスミッションを採用しています。どんなものかというと、入力軸が奇数段と偶数段の2本あり、それぞれの軸にクラッチが配され、クラッチをつなぎ替えて変速するというものです。
例えば、1速で発進した後は2速ギアがかみ合った状態でスタンバイしており、ある程度の速度まで行くとクラッチを偶数側に切り替えて2速に入れます。これを3速、4速…と繰り返していきます。
変速・クラッチ操作は自動化されており、一度走り出せば操作感覚はAT車と変わりありませんが、変速機の中身はMTに近く、クラッチトルクコンバータではなく湿式多板クラッチとなっています。トルコンATと同じようにクリープ現象も発生しますが、どのようにしているのかというと、自動車教習所で習う「半クラッチ」を、ドライバーがペダルでやるのではなく自動でやっているという状態です。
その構造故に、発進する際はコツがいります。トルコンAT車しか乗ったことがない人だと、アクセルを雑に踏んでしまうことがありますが、デュアルクラッチトランスミッションでそれをやるとクラッチが滑って前に進まないほか、クラッチ板を傷める原因になります。MT車のようにゆっくり踏み込んでクラッチを少しずつつなぐようにすると良いでしょう。
なお、操作系もAT車と同じようなシフトレバーですが、GT-RではDレンジ相当のポジションは「A(Auto、自動変速)」です。

ブレーキもひと味違い、通常の乗用車のブレーキディスクが鋳鉄製なのに対して、カーボンセラミックブレーキを採用しています。これは、カーボンとセラミックの複合材でできたブレーキで、軽くて路面への追従性が良くなり、また耐熱性にも優れていて300km/hから停止してもフェードしにくいというメリットがあります。実際にブレーキを踏んでみて、「これが300km/h出せるクルマのブレーキか」と思いました。

走行性能ばかり注目されがちですが、実はこれで、大人が4人きちんと乗れます。

車体が大きく、600PS近いクルマで、運転にコツがいりそうで身構えていたのですが、発進時にコツがいるぐらいで、一度走り出してしまえば各種ハイテク装備の手助けにより、ノート感覚で運転できてしまいます。昔のBNR32などは相当身構えて乗るクルマだったのに!!
ちなみに、デュアルクラッチトランスミッションクラッチペダルがなく、法令上はAT車扱いになり、AT限定免許でも運転できます。しかし、AT限定免許の人間が普段どのようなクルマに乗っていて、運転スキルがどれぐらいなのかというのを考えると、限定免許の人にはGT-Rはあまり運転してほしくありません。

フェアレディZ(RZ34)

GT-Rは元々スカイラインのバリエーションの一つで、故にプリンス系のスポーツカーですが、こちらはダットサン系のスポーツカーです。
1970年まで、Zが付かない「ダットサン・フェアレディ」があり、ダットサン・セダンや初代ブルーバードのシャーシを流用したスポーツカーでした。

2022年に登場した「RZ34」は、プラットフォームとMT以外は一新されており、どう見てもフルモデルチェンジなので本来は「Z35」とすべきものですが、様々な事情によりマイナーチェンジとして手続きを行い、RefineのRを付けて「RZ34」としています。
このような手法は、過去にもアベニールサリュー(W10)やプレーリージョイ(M11)、サニーカリフォルニア→ウイングロード(Y10)でも行われていました。

車両型式 5BA-RZ34
駆動方式 FR
エンジン型式 VR30DDTT
シリンダー V型6気筒
バルブ形式 DOHC・24バルブ
燃料噴射装置 直噴(DIG)
過給器 ツインターボ
最大出力 298kW(405PS)/ 6400rpm
最大トルク 475N・m(48.4kgf・m)/ 1600-5600rpm
変速機 9速マニュアルモード付きAT
車両重量 1620kg
燃料 ハイオクガソリン(レギュラーガソリンも一応使える

今回乗車したのは最上位グレード・Version STのAT車でした。

まず運転席につくと、計器盤はオーラやC28セレナと同じようなLCDタイプ*3で、シフトレバーもE13ノート/オーラと同じ電子式でした。
その一方で、ダッシュボードの真ん中には歴代Zと同じような小さい3連メーターが付いています。RZ34では電圧計とブースト計、タービンの回転計が付いていました。

GT-Rとは異なり、ZのATは昔ながらのトルコンATで段が増えただけなので、いつものトルコンAT車の感覚で発進できます。
ちなみに、GT-R、Z共にD(A)レンジに入れて走っていると、入っている段が見えます。*4
従来のトルコンATで、しかもアイドリング中のトルクがかなり大きいせいか、クリープ現象も強めでした。

MTは6速までしかないのに対して、ATは9速までありますが、街中で走る分には9速までいらないようで、実際に6速までしか入りませんでした。どのクルマでも変速機にはオーバードライブ*5がありますが、RZ34のATは6速が直結、7~9速がオーバードライブとなっています。

GT-Rほど構造が特殊ではないせいか、運転しやすいような感じでした。ただ、これは人だけしか載らないクルマです。単に運転することだけ楽しみましょう。ATでもOKです。

*1:過去にはセダンのGT-Rもあった。ハコスカの時代はボディがセダンしかなかったので必然的にGT-Rもセダンになったが、後にクーペ(2ドアハードトップ)が設定されるとクーペをベースにして出し直した

*2:これを「トランスアクスルレイアウト」という。FF車ではよく見られるが、FR車では珍しい

*3:飛行機では「グラスコックピット」という

*4:GT-Rでは数字だけ表示、Zでは「D」に添え字がされる

*5:変速比が1未満、つまり増速する