伊勢志摩のツートップ

先週末、伊勢神宮奉納花火大会へのお誘いがあり、行ってきました。

伊勢への足といえば、関西方面からだと近鉄特急しかあり得ない*1のですが、せっかく伊勢に行くのに汎用特急車(オレンジのやつ)*2だと損をした気分になるので、「しまかぜ」と「伊勢志摩ライナー」に乗って行くことにしました。

50000系「しまかぜ」

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6 Tc1 5 M1 4 M2 3 Tbd 2 M3 1 Tc2
ク50100 モ50200 モ50300 サ50400 モ50500 ク50600
ハイデッカー プレミアム グループ カフェ 車いす対応 ハイデッカー

(発着地にかかわらず、ク50600が伊勢志摩方を向く。号車番号は大阪・京都発着の場合。名古屋発着はク50100が1号車)

今の近鉄特急のフラッグシップといえば、やはりこれでしょう。近鉄全体では「アーバンライナー」と、伊勢志摩方面に絞ると「伊勢志摩ライナー」と並ぶツートップといえます。

2013年は、20年間隔で行われる伊勢神宮式年遷宮の年でした。これを機に、利用客が年々減少傾向にある近鉄特急、特に伊勢志摩方面への需要掘り起こしを狙って、今までの近鉄特急にない「観光に完全特化した車両」として開発が進められました。

これまでの近鉄特急は、アーバンライナー伊勢志摩ライナーといったある方面に特化した車両であっても、汎用性を損なわないような配慮がされています。それゆえに、「アーバンライナー」なのに阪奈特急として走ったり、「伊勢志摩ライナー」なのに名阪特急として走るということが見られました。

「しまかぜ」では、汎用特急車とは一線を画し、ビジネス利用や短距離の乗車は全く考慮せず*3、あくまで伊勢志摩観光に徹した車両として開発されています。運行ダイヤも固定されている(難波・京都・名古屋からそれぞれ1往復ずつ)うえ、特急券のほかに特別車両券*4を必要とすることもあり、近鉄特急の中でも特別な存在としてPRされ、乗客の間でも同じような認識をされています。

開発に当たっては、近鉄沿線・首都圏*5の4000人、近鉄特急の乗客1万人、伊勢志摩エリアの観光業者、旅行会社などを対象にした市場調査が行われ、コンセプトが固められました。観光特急の構想は2010年にはすでに出ていました。(→降りたくなくなる特急 - みのとら日記GTI-R

形式は、今までの近鉄特急とは違うということを示すため、近年の近鉄特急で多く見られる「2」から始まる形式ではなく「50000系」とされました。

プレミアムシート・ハイデッカー

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「しまかぜ」の基本となる座席なのですが、基本とはいってもアーバンライナーなどのデラックスシートよりかなりグレードが上がっています。それどころか、新幹線のグリーン車より上です。さすがに、E5系E7系の「グランクラス」にはかないません。

全国どこを探してもJR九州ぐらいでしか見かけないであろう本革シートで、リクライニング・オットマンは電動式、さらにN700系グリーン車と同じような、耳元から照らす読書灯まで付いています。枕は、JR東日本の特急用車両よろしく上下にスライドでき、座高に応じて調整できます。背もたれにはエアクッションが仕込まれており、空気圧を調整して腰への負担を和らげるほか、マッサージチェアよろしく空気をリズミカルに出し入れして簡易的なマッサージ機として使うこともできます。

シートピッチは私鉄最大の1250mm*6で、足を延ばしてオットマンを出してゆったりくつろげます。

1・6号車は、床を720mm上げたハイデッカーで、30000系ビスタカーの2階席に近い側面展望が楽しめます。消費電力の削減を目的として照明はLED化されているのですが、LED照明は器具を薄くできるため、図らずして天井が高くなり、一般的な車両並みの居住性を確保することにもつながりました。さらに、運転席の位置が低いため、伊豆急行リゾート21」などのような前面展望も楽しめます。網棚の天地方向の寸法が小さいことや、大きな荷物を持って階段を上り下りするのは辛いだろうということで、デッキにはロッカーがあります。

座席を手動で回転させる方法が今までの特急とは異なっており、古いものは背もたれを前に倒して、比較的新しいものはペダルを踏んで回転させるのですが、「しまかぜ」のはボタンを長押ししてロックを解除してから回すという風になっています。その際、リクライニングさせていると背もたれが定位置に戻り、さらに前に倒れます。

テーブルは22600系や最近リニューアルされた車両と同じように、座席背面と肘かけの中に入っています。シートピッチが広いため、座席背面のテーブルは手前に引いて使います。

窓の天地方向の寸法が大きく見えますが、実際は22600系より15mm小さくなっています。下辺が低いのと、1列ずつ独立しているため大きく見えます。カーテンは、新幹線で見られる上下移動のロールカーテンですが、手元のスイッチで開閉します。

座席番号は、Aが1人掛け、B/Cが2人掛けで、数字は大阪方から1・2・3・4…です。

個室・サロン

4号車(名古屋発着は3号車)には、3人以上のグループでの利用を想定した個室とサロンがあります。個室は和風と洋風が1部屋ずつ、サロンは3区画だけで、ここから先に売れます。近畿日本ツーリストが旅行会社枠として押さえているという噂もあります。

サロンは伊勢志摩ライナーのものと同じ…かと思いきや、通路を伊勢湾側に寄せているため、3人掛けのシートが向い合せになった6人掛けです。伊勢志摩ライナーのはデラックスカーと同じ位置に通路があり、伊勢湾側がサロンシート、反対側がツインシートです。伊勢湾が見えない…こともありません。一応、ドアがなく仕切りも透明になっています。4人以上で利用できます。

個室は、サロンとは逆に伊勢湾が見えるように配置されています。鉄道車両では珍しく空調の温度設定を乗客自らできるようになっているほか、和風個室には掘りごたつまであります。あと、和風個室は土足厳禁です。3人以上で、かつ大和八木・四日市伊勢市を乗車区間に含む場合に利用できます。

個室には、飛行機にあるようなエンターテインメントシステムがあり、前面・最後尾の展望や、現在地の案内、観光案内、BGM、衛星放送、子供向けコンテンツなどがあります。BS放送以外はWi-Fiでプレミアムシート車でも配信されており、スマホタブレットを持ち込んで見られます。

この車両は、30000系の2階建車以来となる中央にデッキがある車両であり、ここで通路の位置が入れ替わります。

カフェ車両・車内販売

3号車(名古屋発着は4号車)はカフェ車両で、近鉄特急で本格的な調理設備を伴い、食事をとれる車両は12000系「スナックカー」のスナックコーナー以来です。近鉄スナックカーの失敗から、食事を取れる車両をあきらめていたと思っていましたが、市場調査で「食事を取れる車両はあった方がよい」という結果が出ており、実際カフェ車両に行ってみると、かなり繁盛していて通路に順番待ちの列ができていました。そんなわけで、カフェ車両で飲食せず、カウンターで「しまかぜ」グッズを買って帰りました。

この車両は、近鉄では20000系「楽」以来23年ぶり*7の2階建車両ですが、2階建になっているのは伊勢湾側のカフェ席のみで、反対側は通り抜け、または販売カウンターのみ利用する乗客のための通路となっており、2階建ではありません。

ルームサービスとして個室まで持ってきてくれるほか(対象は全メニュー)、プレミアムシートでも一部のメニュー(「カフェ席でのみお召し上がりいただけます」と書かれていないもの)は座席まで持ってきてくれます。さながら、往年の小田急ロマンスカー「走る喫茶室」です。

近鉄特急の車内販売は2002年に一度全廃されましたが、2006年に休日の伊勢志摩ライナーで、2007年に休日のアーバンライナーで復活しました。「しまかぜ」でも実施されていますが、「しまかぜ」のみPiTaPaを除く相互利用対象のICカードが利用できます。

車内販売・カフェのメニューは全座席に配置されています。

しまかぜチャンネル(無料Wi-Fi

近鉄で初めて、車内での無料Wi-Fiサービスが実施されています。2種類あり、一般のインターネットに接続できる「しまかぜFree Wi-Fi」と、車内限定コンテンツの「しまかぜチャンネル」があります。

23000系「伊勢志摩ライナー

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6 Tc1 5 M1 4 M'1 3 M'2 2 M2 1 Tc2
ク23100 モ23200 モ23300 モ23400 モ23500 ク23600
デラックス サロン レギュラー レギュラー 車いす対応 レギュラー

(発着地にかかわらず、ク23600が伊勢志摩方を向く。号車番号は大阪・京都発着の場合。名古屋発着はク23100が1号車)

「しまかぜ」との間に20年もの間隔が空いているため、1993年の式年遷宮に合わせて登場した…のではなく、近鉄の伊勢志摩観光開発の集大成ともいえる「志摩スペイン村」へのアクセス特急として、1994年に登場しました。近鉄の「○○ライナー」シリーズでは最後に登場しました。*8

アーバンライナーで好評を博したデラックスカーが設定されたほか、その隣にはグループでの利用を意識した「ツインシート」と「サロンシート」があります。モチーフは「欧州の客車で見られるコンパートメント」です。

レギュラーカーは、パルケエスパーニャの4つのエリアのテーマカラーの座席が配置されていましたが、後のリニューアルで青系統のものにそろえられました。ただし、大阪から伊勢に向かって色が濃くなっています。

登場から20年近くたって、2013年の式年遷宮を控えた時期にリニューアルされました。写真は、上が改修前(阪神なんば線開通2日目に撮影)、下が先日乗車した際のものです。このリニューアルでは色も変わり、奇数編成が赤、偶数編成が黄色です。偶数編成も、一見色が変わっていないように見えて、実際は足元の帯が水色からアーバンライナーと同じオレンジに変わっています。運用は決まっていますが*9、色までは限定されていないため、どちらの色が来るかは乗る時のお楽しみです。

休日に各1往復のみ運行されている大阪・名古屋発着のノンストップ特急は伊勢志摩ライナーの限定運用です。

一時期は名阪特急の定期運用を受け持っていたことがあり、近鉄の「特急用車両の向きは、名阪特急を基準とする」というルール上、伊勢中川以南では大阪・京都発着と名古屋発着で向きが異なっていたことがありましたが、現在は名阪特急の運用がないため、発着地にかかわらず向きは揃えられています。

志摩スペイン村へのアクセス特急ということもあり、CMでは必ずこの車両が最後に出てきていましたが、「しまかぜ」が登場してからは、最後に出てくるのは「しまかぜ」に変わりました。

近鉄特急の小ネタ集

列車名がない

近鉄特急には、新幹線や小田急ロマンスカーなどのような列車名がありません。「何時何分発のどこそこ行き」だけで案内されています。1960年のダイヤ変更までは、「すずか」「かつらぎ」「いすず」「あつた」「なにわ」などと言った沿線にちなんだ名称がありました。ちなみに、上本町発の名古屋行き最終特急は「おわり」でしたが、これは「終わり」と「尾張」のダブルミーニングとも言われています。

その後、特急が増えてかえってややこしくなってしまったこともあり、1960年のダイヤ変更で廃止されましたが、その後も「湯の山温泉サマーライナー」など、不定期の特急には名前が付くことがあります。また、1970年代には一時的に列車名が復活したこともありましたが、こちらもすぐになくなっています。

アーバンライナー」や「伊勢志摩ライナー」はあくまで車両の名前であって、列車名ではありません。ただし、これらの車両を使う場合は「名古屋行き特急・アーバンライナー」や「賢島行き特急・伊勢志摩ライナー」という風に案内します。

なお、系統ごとに呼び分ける場合は両端の駅から1文字ずつ取って「名阪特急」や「阪伊特急」、「京橿特急(読み方は不明)」と呼ばれているようです。例外は「吉野特急」と定期便としては存在しない「湯の山特急」です。

  • 名阪特急
  • 名伊特急
  • 阪伊特急
  • 阪奈特急
  • 京伊特急
  • 京奈特急
  • 京橿特急
  • 吉野特急

かつては、「湯の山特急*10」のほかに京都~難波の「阪京特急」*11や、奈良~伊勢志摩の「奈伊特急」*12もあったほか、平城遷都1300年記念祭の期間中に運行された「名奈特急」*13もありました。

また、天理教の祭事では京都・名古屋~天理の臨時特急が走るのですが、これは特に名称はなく「天理行き特急」やJRと同じ「天理臨」と言われているようです。

甲特急・乙特急

近鉄特急のうち、名阪・阪伊・名伊特急は停車駅の違いにより「甲」「乙」のランク付けがなされています。「甲」はノンストップで、「乙」は主要駅に停車するものを指します。乙特急は一時期「準特急」と言われていましたが、現在京王線で走っている準特急と意味合いは同じで、停車駅の違いで区別されています。また、車両も甲特急には最新かつ最高ランクのものを使用していたのに対して、乙特急にはワンランク下のものを使っていました。このあたりは、かつて小田急で走っていた「準特急*14」と同じです。「甲」「乙」は内部での呼び方であり、対外的には甲特急は「ノンストップ特急」と案内されます。

古い特急用車両では、方向幕に「ノンストップ」と書かれていますが、これが甲特急です。ノンストップの区間は時期によって異なり、かつては名阪特急は上本町~名古屋、阪伊特急は上本町~宇治山田、名伊特急は名古屋~宇治山田がノンストップだったこともありましたが、現在は名阪特急は鶴橋~津、阪伊特急は鶴橋~伊勢市、名伊特急は名古屋~津がノンストップです。ただ、名阪甲特急は最初からノンストップだったわけではなく、名古屋線標準軌化される前は伊勢中川で乗り換えを強いられていたほか*15標準軌化後も伊勢中川の短絡線が完成するまではスイッチバックのために運転停車していました。よって、上本町~名古屋が完全にノンストップだったのは1961年3~4月の一時期だけでした(大阪環状線が全通したのに伴い、鶴橋に特急以下全列車が停車するようになったため)。

ただし、ここ最近は阪伊・名伊甲特急が休日に各1往復しかないことや、名阪甲特急はノンストップよりも「アーバンライナー」で運行することを前面に押し出しており、「ノンストップ特急」も死語となりつつあります。

2012年のダイヤ変更で全ての名阪甲特急が津に停車するようになりましたが、桑名・四日市・白子から名伊乙特急に乗って、津で名阪甲特急に乗り換えることで大阪までの所要時間が短縮されました。ただ、これは近鉄側の事情もあり、「伊勢中川の短絡線を走行中に乗務員*16が交代するのを国交省にとがめられたため」とも言われています。このダイヤ変更以降は津まで運転して交代するようになりました。*17

なお、これ以外の系統では特に停車駅に大きな違いがない*18ため、甲・乙の区分けはなされていません。その一方で、阪伊乙特急の中でも停車駅に違いがあります。

また、「しまかぜ」は停車駅で見ると甲特急に近い*19のですが、甲特急でも乙特急でもない特別な存在です。

甲乙のランク付けがされているゆえの特徴として、甲特急の直前に乙特急が走っていると、停車駅が少ない分甲特急の方が速いため、乙特急に接近します。終点までに逃げ切れる程度の間隔が空いているか、どこかで分岐する場合は特に問題ないのですが、どうしても追いついてしまう場合、乙特急をどこかで退避させるダイヤを組んでおり、「特急が特急を追い抜く」という珍現象が発生します。近鉄以外でも、かつては初代「トワイライトエクスプレス」が「サンダーバード」に追い抜かれる例があった程度です。

後続列車 先行列車 待避駅
621(難波→名古屋)
アーバンライナー
2005(難波→松阪) 名張
9400K(賢島→京都)
しまかぜ
1502(鳥羽→上本町) 伊勢中川

車両の向き

前述の通り、伊勢中川にデルタ線があり、ここを通ると車両の向きがバラバラになって運用に支障をきたす恐れがあります。したがって、近鉄特急の車両の向きは伊勢中川の短絡線を通る名阪特急を基準としたうえで、向きがバラバラになる区間を伊勢中川以南に限定しています。

そのため、伊勢志摩方面の特急は、大阪・京都発と名古屋発で向きが逆になっています。これに合わせて号車番号も逆になっており、山田線・鳥羽線志摩線の特急停車駅では「名古屋行き特急は前が1号車、大阪・京都行き特急は後ろが1号車」という表示があります。名阪特急が満席で、やむなく阪伊特急と名伊特急を伊勢中川で乗り継ぐ特急券を買った場合、この事情を知っておくと、切符を見て「乗り継ぐのにかなり離れている」というクレームを付けずに済みます。

車両運用に関しては、名古屋から賢島まで走った特急が、このままで大阪・京都へ折り返す、またはその逆をやると、伊勢中川以西・以北で向きが違うものが混在してしまい、運用に支障をきたします。したがって、特急が賢島に到着したら、折り返しは始発駅に戻る(例:名古屋発の場合は折り返しは名古屋行き)*20ようにしています。

なお、伊勢志摩ライナーとしまかぜは名阪特急の運用がなく、伊勢中川の短絡線を通らないため、大阪・京都・名古屋発のいずれであっても同じ向きで運行します。ただし、他の特急と案内を統一するため、号車番号のみ逆になっています。そのため、各種設備の号車が発着地によって異なっています。

大阪・京都発着 名古屋発着
車いす対応車両 2号車 5号車
デラックスカー(ISL) 6号車 1号車
サロンカー(ISL) 5号車 2号車
カフェ車両(しまかぜ) 3号車 4号車
グループ車両(しまかぜ) 4号車 3号車
喫煙室(ISL) 3号車 4号車
喫煙室(しまかぜ) 4号車 3号車

車内チャイム

どこの特急でも、車内アナウンスの前にチャイムを鳴らすのが通例ですが、近鉄のは一味違っていて、駅ごとに曲が用意されています。かつては他の特急も含めてCDが売りだされていたこともありますが、現在は「しまかぜ」のものだけ売り出されています。

なお、「しまかぜ」だからといって特別なチャイムを使っているというわけではなく、他の特急と同じ曲です。

22600系の登場時に、一部の駅(京都・奈良など)では曲が変わっているほか、チャイムが鳴らなくなった駅(生駒・名張など)もあります。過去のものまで引っ張り出すときりがないので、「しまかぜ」停車駅の2017年現在の曲を下に記します。

難波 アニーローリー
上本町 夢路より
鶴橋 旅愁
京都 大きな古時計
丹波橋 楽しき農夫
西大寺 おおスザンナ
八木 故郷の人々
名古屋 久しき昔
四日市 オリジナル曲
伊勢市 羊飼いの家路
宇治山田 四季 より「春」
鳥羽 われは海の子
鵜方 きっとパルケエスパーニャ
賢島 マイ・ボニー

座席番号

2013年のダイヤ変更で、近鉄特急の座席番号はJRと同じように数字(進行方向)とアルファベット(左右方向)で表わすようになりました。デラックスカーはアーバンライナーの登場時からずっとこの方式でしたが、レギュラーカーは近鉄独特の座席番号の振り方でした。

  • 窓側が奇数、通路側が偶数
  • 大阪から名古屋に向かって番号が大きくなる
  • 大阪方面を向いて、左側最前列の窓側が1番(2013年のダイヤ変更以降はこの座席が1A)
  • 車いす対応座席は90番台(2013年のダイヤ変更以降は30番台)

デラックスカー、「しまかぜ」のプレミアムシートのアルファベットは、1人掛けがA、2人掛けがB・Cです。

伊勢志摩ライナーのサロンカーは、ボックスごとに番号を振り、アルファベットはサロンシートがA~D、ツインシートがE・Fとなっています。

なお、JRでは号車番号、座席番号ともに西側から振られていますが、近鉄特急(名古屋発着のしまかぜ・伊勢志摩ライナーを除く)は名古屋・伊勢志摩側から1号車、2号車…なのに対して、座席番号が大阪側から振られています。吉野特急は座席番号、号車番号ともに大阪側から振られています。

なお、2003年のダイヤ変更までは名伊特急・吉野特急を除き号車番号の付け方が現在とは異なっていました。

  • 名阪特急:大阪行き・名古屋行き共に、最後尾が1号車(折り返し時に札を差し替える)→名古屋方の先頭を1号車に統一
  • 阪伊特急・阪奈特急:大阪方の先頭が1号車→奈良・伊勢方の先頭が1号車
  • 京伊特急・京奈特急・京橿特急:京都方の先頭が1号車→奈良・伊勢・橿原方の先頭が1号車
  • 名伊特急:名古屋方の先頭が1号車(変更なし)
  • 吉野特急:大阪方の先頭が1号車(変更なし)

なお、後述する親子列車の「子」に相当する列車については1号車を「A号車」に読み替えます。

かつては途中で進行方向が変わる特急(難波~西大寺~京都、奈良~西大寺~伊勢志摩、名古屋~四日市湯の山温泉)も存在しましたが、これらについても通常通り番号が振られています。

A号車、B号車…

近鉄独特の表記で、途中で2方向に分かれる列車(多層建て列車、親子列車)で見られます。連番にしてしまうと乗り間違えてしまうおそれがあるほか、近鉄特急の特徴として日によって編成が変わることがあるため、その時の対応がしやすいというメリットも考えられます。

現行のダイヤでは、京都~西大寺で連結して運行する橿原神宮前・奈良行き特急のうち、奈良発着の編成がA・B号車です。

過去には、伊勢志摩方面の特急のうち、大和八木以東で連結する難波・京都発着の特急で、京都発着の編成がA~D号車でした。

このほか、臨時列車では名古屋発着の天理臨と一時期走っていた名古屋~西大寺の特急は八木まで名阪乙特急にくっついて走るためA号車、B号車…が出てくるほか、大阪発の湯の山特急も白子まで名阪乙特急にくっついていたためA号車・B号車でした。また、定期便ではなくなった大阪・京都~伊勢志摩の親子列車は大みそか終夜運転で出てきますが、これも京都発着の編成がA号車、B号車…です。

なお、号車番号がアルファベットになっても、振り方は数字のときと同じで、1号車がA号車に変わっただけです。最大でF号車まで出てくるように用意はされていますが、実際に運用されているのは最大でもD号車までです。

*1:JRは三重県内では使い物にならないというのが常識と化している

*2:30000系は色こそ汎用特急車と同じだが、もともと伊勢志摩方面への観光利用を意識して開発した経緯があることや、2階建車両があることから特別な存在とみなされている。ただし、1・4号車は汎用特急車と全く同じ構造なので、汎用特急車を連結して6両編成以上で運行することもあるが、現行ダイヤでは30000系同士の8両編成や、さらに2両連結した10両編成というのはない

*3:その割には、定期券と特急券・特別車両券の組み合わせで乗れる

*4:アーバンライナー伊勢志摩ライナーさくらライナーのデラックス料金とも異なる

*5:名古屋駅まで新幹線に乗って、名古屋で近鉄特急に乗り換えて伊勢に行く観光客は相当多い。そもそも、名古屋~伊勢志摩の特急は首都圏から新幹線でやって来る観光客を当て込んで設定されたものである

*6:アーバンライナー以降の近鉄特急のシートピッチは、22000系・16400系が1000mmである以外は1050mmにそろえられている

*7:ただし、20000系は団体専用車であり、定期便に使われる車両では30000系以来34年ぶり。なお、電算記号はしまかぜのSとビスタカーのVを組み合わせた「SV」

*8:21020系「アーバンライナーnext」は、21000系のリニューアル工事の間に抜ける車両の補充用であるとともに、リニューアルのプロトタイプという位置づけでもあるため、「伊勢志摩ライナー」を最後とする

*9:近鉄特急の時刻表では、しまかぜ・伊勢志摩ライナービスタカーアーバンライナーさくらライナーは時刻表にシンボルマークが記されている

*10:一時期、名古屋~湯の山温泉の特急は「名湯特急」と言われていたこともある

*11:阪と京が逆になっているのは、「京阪特急」だと京阪電車と混同されるため

*12:現在は大和西大寺駅の構内配線の都合上、橿原線からスイッチバックして近鉄奈良駅に入ることはできない

*13:上述の事情で、奈良駅まで行けず西大寺止まりだった

*14:小田急準特急は停車駅での差別化はされておらず、特急が多い休日に初代3000形「SE」が足りずやむなく古い車両を引っ張り出してきたために設定された

*15:上本町~伊勢中川で走っていた便が伊勢まで延長され、阪伊特急の基礎となった

*16:他の列車は運転士と車掌のペアだが、名阪甲特急は車掌の資格も持つ運転士が2人乗務しており、運転してない運転士が車掌業務を行う

*17:このダイヤ変更以前から、津に停車する名阪甲特急自体は存在しており、これらの列車に限り津で乗務員交代を行っていた。なお、伊勢中川でスイッチバックしていた時代は、伊勢中川で運転停車中に交代していた

*18:京都発着の特急が高の原に、京橿特急が西ノ京に、吉野特急が古市に一部停車する程度。松阪→京都の特急が1本、榊原温泉口と高の原にも停車。阪奈特急は全て同じ停車駅

*19:大阪発着系統は甲特急の停車駅に加えて八木にも停車、名古屋発着系統は甲特急とほぼ同じで四日市に停車し津を通過、京都発着系統は京伊特急とは異なり八木~伊勢市がノンストップで五十鈴川志摩磯部を通過

*20:ただし、1980年代の一時期は例外的に深夜帯で京都→伊勢志摩→名古屋という運用があったが、翌朝に名古屋→伊勢志摩→京都の運用に入れて向きを戻していた。