近鉄電車の小ネタ集

旧国名の扱い

かつて、近鉄では旧国名の付いた駅は旧国名を省略して案内していましたが(例:大和西大寺西大寺)、2004年頃から省略せず*1案内するようになりました。

もっとも、地元の利用客には旧国名なしの通称が定着しているようで、奈良交通のバス停に至っては旧国名なしの駅名が正式名称というところもあります。近鉄に限らず、旧国名がついた駅は通称として旧国名なし(例:近江今津→今津)で呼ばれることが多いのです。

電車の行き先表示も旧国名を省略していたのですが、幕を交換した車両では旧国名付きの行き先表示が入っています。ただ、駅の看板などでは以前から旧国名を小さく書いていたため、行き先表示も旧国名は小さく書かれています。

奈良線では2006年のダイヤ変更*2で「区間準急」が新設された関係で、奈良線所属車は一斉に幕交換が行われました。「区間準急」は当然「大和西大寺」表示なのですが、それ以外の種別では「西大寺」のまま変更されていない車両があります。また、シリーズ21では種別表示と行き先表示が別になっているため、種別表示だけ取り換えて行き先表示はいじっていないのが多く、「区間準急 西大寺」なんて表示がありました。


8603F(X53)。表示は「区間準急 大和西大寺


3221F(KL21)。表示は「区間準急 西大寺

ちなみに、旧国名と同様に「近鉄○○」駅(難波・奈良・四日市・名古屋など)の「近鉄」も省略しますが、これは現在も省略しています。

お化け


西大寺駅では昼間からお化けが出ます。お化けは普通夜に出るもんだろ…って違う!

近鉄の内部用語では、終点に到着後折り返さずさらに先へ走る電車のことを「お化け」といい、西大寺駅がらみの電車に多いようです。

なぜこんなことをするのかというと、もし西大寺から先の最終目的地を表示して走っている際に何らかのトラブルにより西大寺で運転を打ち切ると、直通先にまで響くためです。西大寺から先を別の列車にしておけば、もし何らかのトラブルで西大寺への到着が遅れても、西大寺で運休するのも簡単だし、西大寺から先は別の編成で運行できます。

この写真は橿原神宮前行き各駅停車ですが、1番線*3から出ています。京都から西大寺まで各駅停車で走り、西大寺到着前に行き先表示を変えて引き続き橿原神宮前まで走ります。

数は少ないのですが奈良線がらみの列車もあり、西大寺まで奈良線の各駅停車・区間準急・準急として走った後、西大寺橿原線天理線方面の列車になる(およびその逆)というケースもあります。複雑なケースだと西大寺まで橿原線天理線の各駅停車として走り、西大寺の6番線で難波方に2両増結*4しそのまま難波まで各駅停車として走るなんていうケースもあります。

種別標識灯

近鉄電車では下にも黄色いランプがありますが、これはヘッドランプではなく、種別標識灯です。関西では種別標識灯のつけ方が種別ごとに細かく規定されており、片方だけつけるなんてことが普通に行われています。その中でも近鉄はかなり細かく、4パターンあります。

両方つける:快速急行区間快速急行・特急・回送・試運転・団体
左側をつける:準急・区間準急
右側をつける:急行・区間急行・鮮魚列車
つけない:各駅停車



特急と快速急行は両方つけます。


急行は右側だけ。



準急と区間準急は左側。


各駅停車はつけません。


阪神1000系の試運転列車。車両こそ阪神のものですが近鉄の線路を走っている以上近鉄のルールに従わないといけません。試運転(回送)なので両方つけます。


8810系から5800系までの通勤車両*5や、「スナックカー」12200系には、横3列の標識灯が装備されています。このレイアウトは全国どこを探しても近鉄だけにしかありません。

外側の1個はテールランプとして、内側の2個は通過標識灯として使われていますが、通過標識灯であれば両側に1個ずつあれば事足りるはずです。ではなぜ2つ横並びなのかというと、おそらく球切れ対策でしょう。もし球切れを起こすと、快速急行は急行・準急・区間準急に間違われ、急行・準急・区間準急は各駅停車に間違われるというリスクがあります。8800系以前の通勤車両などでは標識灯が1個ずつしかないように見えますが、中には電球が2つしっかり入っています。

ただ、シリーズ21では再び横2列に戻っています。

奈良線快速急行

奈良線快速急行といえば、難波〜奈良間34分というのが売り物…のはずなのですが、現在では「看板に偽りあり」といった状態で、公正取引委員会から排除命令が出てもおかしくない状態です。

ここ数年で快速急行の所要時間は40分台*6に達してしまい、ひどい場合は50分かかる便もあります。なぜこんなに遅いのかというと、西大寺の手前で信号待ちが多く、ダイヤ設定に問題があり、さらに東花園周辺の連続立体交差事業で徐行区間が多いためです。

ここから先は実際にあった話です。

快速急行の3〜5分前に各駅停車が出るのですが、待避駅の設定に問題があります。本来ならば布施で追い越すべきものなのですが、各駅停車は布施で快速急行の通過待ちをせず八戸ノ里まで逃げ切るという設定になっており、河内永和と河内小阪では追い越しができないため八戸ノ里まで各駅停車の後ろを走り、その間はずっと徐行しっぱなし。八戸ノ里から加速し始めるのですが、今度は工事区間(河内花園〜瓢箪山)で45km/h制限。瓢箪山を出て生駒山を越え、学園前まではそれなりにスピードは出ているのですが、あやめ池を通過して西大寺の手前まで来ると65km/h、45km/h、30km/h制限*7がかかり、ついに停止信号に引っ掛かり足止め。京都行き電車が出るとまた動きだし、結局西大寺まで32分かかってしまいました。

阪神三宮近鉄奈良間の所要時間は80分程度と想定されていますが、これは難波〜奈良間34分と想定した場合の話で、現状では90〜100分はかかるでしょう。

余談ですが、八戸ノ里駅はホームが6両分しかないらしく、増結で8両編成になった「アーバンライナーplus」21000系の回送列車が八戸ノ里で待避している際、両端が思いっきりホームからはみ出していました。

ちなみに1972年11月改正までは「特急」として運行されていましたが、特急時代は鶴橋〜西大寺間ノンストップ*8というすさまじい列車でした。近鉄特急は普通特急料金を払って乗るものですが、奈良線と新幹線開通前の京都線橿原線特急は特急料金が不要でした。京都線橿原線の特急は新幹線開通後に有料化され現在に至りますが、奈良線の特急は快速急行になりいったん全廃され、1973年3月改正で難波〜京都間の特急が設定されて特急の設定が復活、9月には難波〜奈良間の特急も復活し現在に至りますが、難波〜京都間の特急は1992年3月改正で廃止されました。*9

9020系の転落防止サイン

9020系には、先頭車同士を連結した際に転落防止幌がないため、音と光で転落を防止する装置が付いています。先頭車同士を連結した際に転落防止幌がない*10上に、近鉄の車両は他社と比べると連結部の間隔が大きく、さらにシリーズ21では先頭部が完全な平面ではなくわずかにカーブしているために間隔がなおさら広くなるため、これは結構有効な装置でしょう。

連結部の下、テールランプと種別標識灯の横にフラッシュランプを装備し、連結している際に点滅するようになっています。さらに、「ポンポンポンポン、ポンポンポンポン、車両連結部です。ご注意ください」というアナウンスが流れます。

L/Cカーの前史


ロングシートクロスシートを状況に合わせて使い分けることができるL/Cカーは、1996年に近鉄が初めて実用化したため、一般には近鉄が思いついたと思われていますが、実はそれよりさかのぼること1972年に国鉄でその発想が浮かび上がり、実際に試作車も作られていたのです。

当時鳳電車区に所属していた「クハ79929」を、デュアルシートの試作車として吹田工場で改造し、大井工場の「出来栄え審査会」に出品されました。ラッシュ時に必要な輸送力と昼間に必要な高い居住性を同じ車両で両立できないか、というのは近鉄国鉄も同じ考えで、手動で座席を転換する装置が付いていました。72系電車のロングシートは8人掛けだったため、2人掛けクロスシートが4つ並べられたような感じでした。

ところが、近鉄のデュアルシートと違うのは、ロングシートをそのままクロスシートにしたような感じだったために背もたれの高さが低くあまり座り心地がよくなく、さらに転換が手動であったため操作が面倒なことから、営業運転ではロングシートのままで実用化されませんした。

近鉄のデュアルシートは、その点を踏まえて(?)背もたれの高さはクロスシート状態を基準として設計され、その頃になると自動転換装置も出てきたため転換は乗務員室からの操作で自動で行えるようにできています。

皮肉なことに、そのデュアルシートを思いついた国鉄の後身のひとつ、JR東日本近鉄方式のデュアルシートを導入してしまったのです。仙石線103系置き換えのために山手線から205系を改造の上転入させたのですが、18編成あるうちの5編成に「2WAYシート」として導入されました。

*1:伊賀神戸など以前から省略していない駅もあった

*2:近鉄では改正とはいわない

*3:西大寺始発の橿原神宮前・天理行き各駅停車は通常6番線から出る

*4:西大寺の6番線からは難波へも出られる。橿原線の各駅停車は4両だが、奈良線は早朝の一部を除き最低でも6両で走る

*5:5200系はLEDを使用し、1台で通過標識灯とテールランプの両方として使える

*6:大和路快速も大阪(梅田)〜奈良間は46分だが、遠回りしているのでそれぐらいはかかる

*7:近鉄のATSは停止・30・45・65・95・無制限の6段階で速度照査をかける

*8:快速急行になってからも、朝ラッシュ時の上り列車に西大寺仕立て(始発)の便があるが、これも初期は鶴橋までノンストップだった。とはいえ、大阪線快速急行にしても五位堂〜鶴橋間ノンストップ

*9:実際はその分純減というのではなく、西大寺で系統分割され奈良発着の京都・難波行き特急となった

*10:阪急7000系+8000系には先頭車同士の連結部に転落防止幌を付けた編成があるが、これは事実上固定編成として運用しているため