さようなら鮮魚列車 -まもなくダイヤ変更-

https://www.kintetsu.co.jp/all_news/news_info/sengyo.pdf

鮮魚列車はどんな列車かというと、伊勢志摩の新鮮な海の幸を届ける行商人のための貸切列車で、伊勢志摩の海産物の行商人だけが乗ることができます。

伊勢志摩の行商人たちは、昔は一般列車に混乗していたとのことですが、魚介類の臭いは強烈なもので、他の乗客に迷惑がかかるということから、貸切列車が仕立てられました。利用にあたっては「伊勢志摩魚行商組合連合会」に加入し、利用する区間の定期券と近鉄から発行された会員証、大きいものを持って乗るため手回り品切符を持って乗ります。

鮮魚列車は1963年9月21日のダイヤ変更から運行を開始し、朝は6時過ぎに宇治山田を出発して上本町に向かい、夕方に上本町を出発して松阪へ帰るというダイヤになっています。停車駅は急行どころか快速急行より少なく、鶴橋・大和高田・大和八木・桜井・榛原・名張桔梗が丘伊賀神戸榊原温泉口・伊勢中川・松阪・伊勢市のみです。これ以外の駅でも特急や快速急行の通過待ちのために停車することがあります。

(同じ区間での停車駅)
鮮魚列車:鶴橋・大和高田・大和八木・桜井・榛原・名張桔梗が丘伊賀神戸榊原温泉口・伊勢中川・松阪・伊勢市(1976年3月18日ダイヤ変更以前の急行と同じ)
快速急行:鶴橋・五位堂・大和高田・大和八木・桜井・榛原・室生口大野・赤目口~青山町の各駅・榊原温泉口・伊勢中川・松阪・伊勢市
急行:鶴橋・布施・河内国分・五位堂・大和高田・大和八木・桜井~榊原温泉口の各駅・伊勢中川・松阪・伊勢市

近鉄以外でもこの手の列車は走っており、著名なものでは京成電鉄の「行商専用列車」がありました。これは、千葉県で生産された野菜などの行商人が東京都内へ行くための列車で、鮮魚列車と同じように業界団体に加入するようになっていました。いわゆる「菜っ葉電車」です。京成線のものは、全盛期は上野行きだけではなく浅草線方面への列車も存在していたこともありました。
しかし、京成線のものは一足早く規模を縮小し、1982年から1便丸ごとではなく定期列車の最後尾1両のみという形で運行されるようになりました。1998年には浅草線方面(浅草線内は誰でも乗車可能)のものが無くなり、朝の上野行きの1本だけが残りましたが、2013年3月末をもって全廃されました。これ以降、行商人向けの貸切列車は全国でも近鉄の「鮮魚列車」だけとなりました。
近鉄とは異なり、専用車両は用意されておらず、末期には当時の最新型だった新3000形も行商専用車として走っていました。

全国で最後まで残った行商人向けの貸切列車であるところの、近鉄の「鮮魚列車」も、来たる3月14日のダイヤ変更で廃止され、代わりに朝の松阪発上本町行き急行(名張から10両編成で快速急行)の最後尾を行商人専用とする、かつての京成電鉄と同じスタイルに変わります。
とはいえ、魚介類を運ぶ車両なので他の車両は共用できません。そこで、一般列車に連結する車両ながら、目立つようにラッピングした専用車両が用意されることになりました。
その名も「伊勢志摩お魚図鑑」です。3月16日(鮮魚列車は休日は運休)から走り出します。行商人向けの貸切車両としての運行のみならず、この車両を用いたイベントも企画するとのことです。