昨日、「HD DVDから撤退する」と、東芝から正式に発表がありました。
それに対する株式市場の反応は、「東芝の判断は正しかった」「これ以上泥沼化してほしくない」という風潮があり、撤退するという報道がなされた直後から東芝の株価は急上昇*1。これから新しく(VHSや従来のDVDからの乗り換えで)買う分には規格がどちらかに統一されていた方が都合がよいでしょうが、問題なのはHD DVD機器をすでに持っている方々なのです。「高い金払うてHD DVD買うたのにどないしてくれんねん」という意見が必然的に出てきます。
ただ、アフターケアに関しては「製造終了後8年間は補修用部品を保有し続ける」という保証規定があり、また東芝も「アフターケアはきちんとやる」と発表しているため心配ないでしょう。しかし、自分で録画して楽しむ分には良いとしても、ソフトが手に入らなくなるというのは痛い。
ちなみに、東芝もBlu-rayデッキを出すのかな?かな?と思われていましたが、「出すつもりはない」とのこと。
本日は、これまでに皆様から頂いたご意見をもとに話を進めていくことにします。
普通のDVDとHD DVDが混同されている
これまでいただいたご意見の中には「一般の人は“HD DVDって何なの?”という人がいる」とか、「普通のDVDとHD DVDが混同されている」というのがありました。
つまり、知名度が足りないということです。これはBlu-ray陣営とHD DVD陣営の広告戦略の違いから明らかで、Blu-ray陣営はソニーが矢沢永吉を起用して
「せっかくのハイビジョンテレビ、ブルーレイじゃないと、もったいない」
「え!?このDVDの矢沢、ハイビジョンじゃないの?」
「テレビはハイビジョンなのに、ハイビジョンで見てなかったってこと?もったいない…」
などと、従来のDVDとBlu-rayの違いがわかりやすいCMになっています。シャープは、液晶テレビと同じく吉永小百合を起用して…
「地上デジタルハイビジョン放送は驚くほどキレイ! でも、せっかくの美しさをこのテープでは…残せない!?」
「そこでAQUOSブルーレイ! ハイビジョンの美しさをそのまま録画できるんです。」
シャープの場合は、ターゲットが「VHSを使い続けている中高年層」なのでソニーのやつとは単純に比較できないのですが、これでもBlu-rayのよさは伝わってきます。それに対してHD DVDはどうかと言えば、
「ハイビジョン録るなら、やっぱりHD DVD。でもこれからは、普通のDVDにも、ハイビジョンを気軽に残せちゃうんです。」
などと、従来のDVDとHD DVDの違いがはっきりとわかりづらい*2CM、それどころかHD DVDの存在意義を否定しかねないようなCMになっています。これじゃ、普通のDVDとHD DVDを混同されても仕方ない。
ちなみに、HD DVDはHDD(ハードディスク)と名前が似ていて紛らわしいというのも聞かれます。先日の「ちちんぷいぷい」で、出演者の一人がHDDとHD DVDを間違えていました。*3
これは販売店での扱いの差にもあらわれていて、Blu-rayはかなり目立つように置かれているのに対して、HD DVDは出しているメーカーが東芝しかなく、またあまり目立つ装飾がなされておらず、「HD DVD」マークの右半分は従来のDVDと同じ*4であり、現行機種は1機種(RD-A301)しかないことから、探すのに苦労します。ちなみに同じことは薄型テレビでも行われており、「AQUOS」「VIERA」「BRAVIA」といった有力なブランドは、遠くからでもわかるような目立つ装飾がなされているのに対して、それ以外はあまり目立たないのであります。
話は変わりますが、ゲーム機でHD DVDを採用しているのは「Xbox 360」ですが、これ自体があまり売れていない(PS3とWiiの陰に隠れるようになった*5)というのもHD DVDの売れ行き不振につながったのでしょう。
これは余談ですが、「RD-A301」のCMのナレーションは若本規夫だというのはここだけの話。「サザエさん」の合間にもこのCMは流れているので、「穴子さんがナレーションやってる」というのはわかるでしょう。
北米市場での戦略ミス
「最大市場となる北米で失敗した」というご意見もありました。HD DVD陣営にはインテルやマイクロソフト*6も名を連ねていましたが、HD DVDのメインとなる東芝が、北米でソニーほどのブランド力を持ち合わせていないということもあります。
また、松下電器はもともと販売戦略がうまいことで知られ、北米でも「Panasonic」としてそれなりのブランド力を持ち合わせています。ソニーはベータやMMCD*7で、技術偏重の社風が原因でセールス面では出遅れてしまい大敗を喫したこともあり、Blu-rayでは松下電器を取り込んでセールス重視の戦略に転換した(というよりは、ソニーの技術力と、松下電器の販売力をうまく融合させたといったほうがよい)ところ成功した、ともいわれていたりします。
さらに、アメリカの映画会社のほとんどがBlu-ray支持を表明したため、北米市場ではBlu-rayがかなり浸透していました。これもBlu-ray陣営の激しいセールスが功を奏したのでしょう。