1本カットしただけ?

先週発売された4代目(K13)マーチ。エンジンは1200ccのままですが、3代目では直4だったのに対して4代目では直3に変わりました。

直3というと軽自動車のエンジン、というイメージがありますが、最近はいわゆる“リッターカー”でも直3エンジンが採用されています。トヨタではヴィッツ・パッソの1000cc車はダイハツの直3エンジン(1KR-FE)を装備しています。

K13マーチのエンジンは「HR12DE」。ティーダなどに装備される「HR」シリーズの一員ですが、ここでよく言われているのは「HR16DEのエンジンからシリンダーを1本外しただけではないのか?」ということです。

実際、スペックを見ればボア×ストロークは全く同じで78.0mm×83.6mm。これでは、「1本削っただけやな」といわれるのも無理はないでしょう。ただ、そのほうが一から設計する(3代目まではエンジンから設計していた)よりも安く上がるのです。もちろん、シリンダーを減らしたり増やしたりするだけではダメで、数に合わせて点火するタイミングを設定する必要はあります。

過去にはL16とL24の例もありました。L24は、L16に2本付け足した直6エンジンであります。また、同じシリーズでシリンダーの本数が違うものが混在しているのはLシリーズ以来であります。

で、「HR16DE」とはどんなエンジンなのかというと、HR15DEのストロークを長くしただけだったりします。ノートのMT車と、ラティオのMT教習車などに装備されています。

なぜ直3?

直3エンジンというと、その振動が原因で4サイクルでは長らく敬遠されており、かつてはわざわざバランスシャフトを入れて1000ccの自動車用4サイクル直3エンジンを作っていたほどでした。

のちに、バランスシャフトなしのエンジンも登場しましたが、これはけいよん!…じゃなくて軽自動車用で、「軽自動車程度の排気量(550cc→660cc)では振動は気にならない」と割り切ってしまったうえでの設計でした。

現在は、エンジンマウントが改良され、またある程度までは我慢するという考え方もあるため“リッターカー”でも3気筒が増えつつありますが、4気筒と比べると3気筒はシリンダーが1本少ない分機械的損失が少ないのです。

Made in Thailand

K12までは、日本で売る分は日本で生産していましたが、K13はタイで生産し日本に輸入する形が取られました。日産の逆輸入車というと、最近ではデュアリス(イギリス製)がありましたが、日本デビュー後しばらくして国内生産に切り替えられました。

「タイ製ということで、仕上がりは大丈夫かいな?」という不安があるのもまた事実ですが、朝日新聞にこんな記事が出ています。

 日産自動車は、今年夏から逆輸入に切り替える新型「マーチ」を生産するタイ工場の組み立てラインに、逆輸入車の特別検査工程を設けることを明らかにした。現行モデルをつくっている追浜(おっぱま)工場(神奈川県横須賀市)の日本人の検査担当者数人が常駐し、「日本品質」を維持しているか最終確認。日産初の新興国からの逆輸入に、品質を不安視する声に対応した。

 生産ラインの最後部の検査工程のさらに後に、日本向け車両専用の検査工程スペースを設ける。日本の消費者が気にするドアの建て付けの微妙なずれやわずかな傷など、品質を細部までチェックする。輸入後も追浜工場で、輸送時の傷などがないか確認する。

 また、組み立て工程にも追浜工場の担当者を配置。現地従業員を指導する。昨年から数十人をタイに派遣。ボルトの締め方などの基本技能向上や細かな傷を付けない丁寧な作業などを指導してきた。マーチの生産は12日、東南アジア向けから始まる。

 日産はこれまでもスポーツ用多目的車(SUV)などを欧州から逆輸入したが、新興国からは初めてだ。日産幹部はマーチ組み立てラインについて、「追浜の二つの生産ラインに続く『追浜第3ライン』と位置づけて、品質確保に取り組んでいる」と話す。

 新型マーチは、主に急成長する新興国を狙った低価格小型車として開発された戦略車。生産コスト引き下げのため、タイを皮切りにインド、中国、メキシコといった新興国でも生産する。現行モデルを生産する追浜工場と英国工場では生産を終える。日本での価格は100万円前後と、現行モデル(約110万〜180万円)より手頃になるとみられている。(小暮哲夫)

つまり、生産段階で厳しくチェックし、日本に着いてからまたチェック、という厳しい工程を経てユーザーに引き渡されます。デュアリスも、九州工場で整備してから引き渡していました。

ただ、デュアリスが国内生産になったのは為替レートの関係や欧州でのヒットぶりもありますが、「質があまりにも悪く、納車前の整備で苦労させられたから」というのもあります。K13マーチも同じようなことになれば国内生産に変わる可能性があります。